教育福島0205号(1997年(H09)09月)-007page

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の専門家である上に教育への情熱も高く、授業が「つまらなかった」原因は全くこちらの知的好奇心の低さにあったことはいうまでもない。ただ、ここで一言言い訳をしておきたいのである。それは、高校での簿記は記帳練習が中心でしかも検定試験に合格するための技法の習得に傾斜しており、生徒の知的好奇心を刺激するような構造にはなっていないことである。

十年程前であったろうか、ドイツを拠点に活躍している本県(相馬市)出身のピアニスト荒憲一氏と、福島市での演奏会の後、一緒に食事をする機会があった。その折、「先生は聴衆にどんなメッセージを送ろうとしているのですか」という質問をぶっつけてみた。荒氏の答えは、明快であった。「私が聴き手に伝えたいものは、その音楽から自分が受けた感動そのものです」と。その道の達人のいうことは、一つ一つ重みがある。それはまさに教育の本質をも突いており、目から鱗が落ちる思いであった。

複式簿記はそれ自体整然とした美しいシステムを備えており、ゲーテを感動させたように、多感な高校生の知的好奇心を刺激し感動を呼び起こすはずである。そのためには、複式簿記の底流に奥深く流れている基本原理こそを教授すべきであろう。現実の企業の簿記実務はほとんどコンピュータ化されており、今や記帳練習は複式簿記の基本原理を理解するための補助手段として意味を持っているにすぎないのだから。

 

【筆者紹介】

相良勝利・さがら・かつとし

〔略歴〕

昭和十七年四月 福島県伊達郡川俣町に生まれる

三十六年三月 福島県立福島商業高等学校卒業

四十一年三月 福島大学経済学部卒業

五十八年四月 福島大学経済学部教授 現在に至る

六十三年三月〜平成元年一月

ドイツ・ケルン大学客員教授

(文部省派遣在外研究)

 

〔専攻〕

経営分析

 

〔現在の主な社会活動〕

・福島県地方労働委員会公益委員(平成八年六月〜)

・福島県大規模小売店舗審議会委員(平成五年四月〜)

・福島県政府調達苦情検討委員会委員(平成八年十月〜)

 

 

 


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