教育福島0206号(1997年(H09)10月)-007page

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んでしまう結果を招いてしまう。

個性を伸ばすと異口同音に唱えながら、校長は教師を、教師は生徒を画一的に管理している。このような体制を打破しない限り、登山隊の仲間に教師を招きたくはない。協調の大切さを人に説きつつ、自分で実行しない人が多いからである。また、面倒なことには拘わりたくない責任逃れが多く見られるからでもある。その姿勢は、現場で困ったことに遭遇した場合に、必ず「どうずれば良いか」よりは「言い訳」を思考させてしまう。例えば、チベットやネパールにおいてさえ、「東京での集会ではこうだったのに」とか「当初の計画ではこうだった」と後ろ向きに判断する傾向が強い。

心に浮かぶことを一気に書きなぐってしまったが、むろんそのような教師ばかりでないことも十分に認識している。しかし、自ら自然体験するチャンスの少ないままに教師になってしまった人が多いように思う。ここ何年かはそういう世代が教師になると予想される。それならば、学校の在り方を考慮すべきだろう。小・中・高校を通して、自然体験盛りだくさんのカリキュラムを作るべきではないか。

昨年から教養審や保体審の委員として、文部省の会議室に多く通った。立派な答申を大臣に手渡しながら、これが都道府県の教育委員会を経て、学校現場に降りていくまでにどれほどの時間がかかるのかと思った時、気が遠くなるのを覚えた。会議に出席している委員や文部省の関係者の真剣さも、学校現場も両面とも知っているが故に、このギャップの深さにため息が出てしまう。

私は、いつになっても自然体験の尊さを訴えて行きたい。自然の中でこそ、人間の持って生まれた本能的な五感が研ぎ澄まされると確信しているからである。自分の命を守る真の「生きる力」は、この中から誕生してくるのだ。

 

【著者紹介】

田部井淳子・たべいじゅんこ

〈福島県しゃくなげ大使〉

〔略歴〕

昭和十四年 福島県三春町生まれ

三十七年 昭和女子大学 英米文学科卒業

日本物理学会ジャーナル編集部勤務

三十八年 社会人の山岳会「龍鳳登高会」入会

四十四年 女子登攀クラブを設立

五十年 エベレストに女性世界初の登頂に成功

五十五年 キリマンジャロ登頂(アフリカ大陸)

六十二年 アコンカグア登頂(南アメリカ大陸)

六十三年 マッキンリー登頂(北アメリカ大陸)

平成元年 エルブルース登頂(ヨーロッパ大陸)

三年 ピンソンマシフ登頂(南極大陸)

四年 カルストンピラミッド登頂(オセアニア大陸)

※女性では世界初の七大陸最高峰登頂者である。

 

〔主な著書〕

『さわやかに山へ』(東京新聞出版局)

『エプロンはずして夢の山』(東京新聞出版局)

『山の頂の向こうに』(佼成出版)

『七大陸最高峰に立って』(小学館)

『エベレスト・ママさん』(新潮社)

 

〔主な受賞歴〕

昭和五十年 最高勲章グルカ・ダクシン・バフ賞

文部省スポーツ功労賞、朝日体育賞

日本スポーツ大賞

六十三年 福島県民栄誉賞第1号、埼玉県民栄誉賞

川越市民栄誉賞、三春町名誉町民

エイボンスポーツ賞

平成四年 文部省スポーツ功労賞(2回目)

七年 内閣総理大臣賞(男女共同参画社会づくり)

 

 

 

 


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