教育福島0206号(1997年(H09)10月)-015page
3 施策の展開
(1) 生涯学習の推進
青少年自然体験活動
『たくましく生きる少年のつどい』
自然が人を優しくする
「ジャガイモ大きくなってる?」
第二回目に参加したM君は、そう言いながら、学生リーダーと共に農園にやってきました。雑草が生い茂り、ジャガイモの葉が見えなくなってしまった畑の土を堀り起こす姿は不安気の様子でした。
普段、家にこもりがちな小さな手を真っ黒にして土を堀り起こすと、大小様々なジャガイモが顔を出しました。種芋を植えて約一ヵ月。雑草にもめげず太陽の恵みを受けたジャガイモが、大きく成長していたのです。バケツいっぱいに堀りあげたM君の顔が微かに微笑んでいました。
収穫したジャガイモを、早速、カレーの中に入れ、食べることにしました。参加した保護者の方々から、「家ではあんまり食べないのですが」という声を耳にしました。自らの手で掘り起こし、自然の中で味わう夕食に食が進んだようでした。
自然体験を通して心の開放を
学校になじめない子供とその保護者を対象にした第一回「たくましく生きる少年のつどい」を、百十四名の参加者と共に、去る六月三日、郡山少年自然の家で開催しました。
新緑の若葉が目に映え、すがすがしい青空の下、『触れ合いネイチャーゲーム』を通して、心地よい汗を流すことができました。
今年度は、自然体験を通して心の開放をめざすことを目的に、年間五回通算七泊十二日の日程で、定員をはるかに上回る参加者とともにスタートしました。
第一回 六月三日
第二回 七月三〜四日
第三回 八月二十八〜三十一日
第四回 十月三〜五日
第五回 二月七〜八日
深緑の森から紺碧の海へ
〈第三回目のつどいから〉
ゆったりとした時の流れの中で
同年齢の友とのテント生活。学生リーダーを交えての語らいの場。夏の大三角形と木星がきらめく満天の星空。そんな深緑の森の中で、ゆったりと時が流れ、今まで、自ら話せなかった子供たちが小さな火を囲み、笑い声が聞こえてきます。
ここへ来て、額に汗してテント設営したり、食事を作ったりした今日の出来事を、目の前にゆらめく火を見つめながら、自分の生活について友と語り合う姿が見られました。子供たちのアンケートの中に、「新しい友達ができた」「自分から食事を作って楽しかった」という感想が数多くありました。
明日に期待を込めて
二日目の夜を迎え、明日は、海へ。今まで、なかなか夜眠ることができなかった子供たちも、明日のために眠ろうという意識が出てきました。少しずつ、規則正しい生活ができるようになることも、心の安定につながるものと考えます。
さわやかな潮風のもと
二日間を郡山少年自然の家でキャンプ生活をした子供たちは、三日目に、いわき海浜自然の家へ移動し、海辺でのロッジ生活を体験しました。さわやかな潮風のもとでの活動は、子供たちの表情まで明るくしてくれたようでした。
タイヤチューブと角材などを使って、グループごとに作り上げたいかだ。共に力を合わせて一つの目標に向かうこと。自分だけではなく、そこに目的を同じくする友がいること。すべてが、海という自然の中で体験できることなのです。いかだ遊びをしたり、波打ち際で友と語り合ったり、砂浜で遊んだりするグループなど、自分なりに思い思いの活動をすることができました。
別れ際、互いに手を振り合い、次回の再会を約束する姿は、実にさわやかな表情をしていました。
自然と人との交流を通して
回を重ねるごとに、心の開放が図られています。通学について真剣に考えているという中三の男子。友達ができたと連絡先を見せてくれた中一の女子。「また来るね」と握手して
分かれた小五の男子。自然体験の中で、子供たちの心が少しずつ変化をしてきているのが感じられます。