教育福島0210号(1998年(H10)04月)-006page

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提言

 

学びて思はざれば

 

福島県体育協会副会長

元福島県教育委員会委員長

宮森栄介

 

分岐点に遭遇した時に、常に判断の根底にあった言葉の様に思い起こされます。

 

論語の為政編に「学びて思はざれば則ち罔し、思ひて学ばざれば則ち殆し」とあるのは、皆様御承知のとおりでありますが、これは亦、小生の母校であります県立会津高等学校の生徒が全員加入することになっております、論語の「学びて時にこれを習ふ楽しからずや」から命名された『学而会』の歌の中にある「学びの海に梶枕、波路はるかに渡る身の、心弱くて叶うべき、男児の意気に進まばや」と、入学以来今日まで同窓生の集まりがある度に歌い続けてまいりましたこの一節は、今振り返って見ますと、私の歩んで来た今までの人生の中で出逢った幾つかの大きな分岐点に遭遇した時に、常に判断の根底にあった言葉の様に思い起こされます。

夏目漱石の「坊ちゃん」に登場する数学教師の山嵐先生は、会津人であるというキャスティングが当時の読者層に共感を持って違和感なく受け入れられたことを想い起こしますと、やはり小生も会津人の一人であったかと、ついほろ苦い感傷が湧き上がるようです。どちらかと申せば「思ひて学ばざれば則ち危し」の方に片寄った道程を歩んだ学生時代が懐かしく、亦、一貫して得た友人達の多くは与謝野鉄幹の言葉どおり「友を選ばば書を読みて、六分の侠気四分の熱」の分野に属する人間であり、それが四十数年を経た今でも交友関係として持続しておりますことを考え合わせますと、内心忸怩たるものが数多くあるものの「我が青春に悔いなし」と云うことのできる部分も多少なりあっ

 

 

 


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