教育福島0210号(1998年(H10)04月)-030page

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アニメになった名作たち

 

『ムーミン』『家なき子』『フランダースの犬』『アルプスの少女ハイジ』。いずれも児童文学の名作と言われる作品ですが、「それでは共通点は?」と尋ねれば、多くの方が「昔、テレビで見ました」と答えるのではないでしょうか。

このように、数多くの作品がテレビや映画によりアニメーション化され、子供たちに親しまれて来ました。しかし、原作とは違う形に脚色されていることも意外と多いのです。

例えばタイトルですが、次のアニメの原作書名をご存じでしょうか?

Q→1)《アルプス物語わたしのアンネット》2)《おねがい!サミアどん》3)《大草原の小さな天使 ブッシュベイビー》4)《未来少年コナン》(名探偵…ではありません)5)《名犬ジョリィ》6)《ロミオの青い空》

A→1)『雪のたから』2)『砂の妖精』3)『カバの国への旅』4)『残された人びと』5)『アルプスの村の犬と少年』6)『黒い兄弟』

イメージがずいぶん違うことに驚かれたと思います。また、主人公の名前が変えられている場合もあります。前出の作品の中でも、5)のジョリィは原作ではベル、6)のロミオは原作ではジョルジョとなっているのですが、日本では馴染みにくい名前ということで変更されています。更には、原作には登場しないマスコットキャラクターを誕生させたりということがあるようです。

次にストーリーですが、原作が短い場合など、その基本設定だけを活かし、シリーズの殆どをオリジナルシナリオに大幅変更することもあります。その成功例の一つとして、皆さんご存じの《母をたずねて三千里》があげられます。一年間にわたってテレビ放映されたこの作品の原作は、『クオレ-愛の学校』というイタリアの学校を舞台にした作品で、その中で語られる”毎月のお話”で紹介された短編の一つなのです。原作では簡単に述べられただけの日常描写が、アニメでは丹念に描き込まれていますが、原作の雰囲気を壊すことなく、見事な成功例となっています。

通常アニメの原作となる作品は、高学年を対象とした完訳に近いものか、数百頁もある原作を数頁にダイジェストした、絵本で出版されているようなものが多く、物語に純粋に感動できる年代と思われる低学年の子供たちに対しては、ちょうど良いものが無いというのが現状です。ストーリーの骨格だけになってしまったダイジェスト絵本で読むよりは、丁寧な作りのアニメで一年なり半年をかけ視聴した方が、物語を味わうためには有効な手段なのかもしれません。しかし、基本的にアニメと本は別物であり、それぞれが別々な内容を語るのにふさわしい表現方法を持っています。更に、(これは絵本にもいえることですが)アニメ化された映像のイメージがあまりに強く、その後、原作を読んだときに違和感を覚えてしまうという危険性もあります。極端な場合、アンデルセンの『人魚姫』と、ディズニーの《リトル・マーメイド》のように、ストーリーさえ全く異なってしまった作品もあるのです。

アニメを見て関心を持った方は、ぜひとも原作を手にとり、本当の姿を知っていただきたいと思います。

多くの名作がアニメーションとなり、親しまれていますが、ごく有名な作品以外は、その原作をご覧になる機会も意外と少ないのではないでしょうか?県立図書館では、四月十一日(土)から六月三日(水)まで、展示コーナーにおいて「アニメになった名作展」を開催しております。アニメの原作となった図書やアニメのポスター、パンフレット等をご紹介すると共に、当館所蔵のアニメ原作図書目録も作成いたしました。

懐かしのあのアニメ、いま放送中のこのアニメの原作を、この機会にどうぞご覧ください。

 

 

 


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