教育福島0210号(1998年(H10)04月)-050page
ふるさと探訪
県指定重要文化財(絵画)
絹本著色達磨図一幅(けんぽんちゃくしょくだるまずいっぷく)
所在地会津若松市城東町一番二五号県立博物館
所有者天草寺
菩提達磨は南インド生まれで、中国に禅宗を伝えた高僧です。
本図は、上歯二本で下唇を咬む面貌で表され、肉身は白を画絹の裏から塗り、表から淡墨で描き起こし、朱をかけ、眉毛、安樽、胸毛を墨の細線で手描きしています。また大衣は朱を画絹の裏から塗り込め、雲形の文様を散らし、衣文を肥痩のある垂線で描き起こし、裏地は緑の草汁で、内衣は白で塗り、濃墨の細線で描き起こすという技法で描かれています。
本図は、こうした写貌表現と雄津な着衣の筆致と相倹って、力強い達磨図となっています。筆者は不明ですが、制作時期は作風から室町時代の初期と思われ、優れた達磨図半身像の一つとして高く評価されます。
なお、「会津旧事雑考」には、天正十八年(一五九〇)に豊臣秀吉が会津黒川(若松)に入った時天寧寺住職が達磨図と寒山拾得図・竹図を贈ったところ、秀吉は寺宝であるといって受け取らず、逆に白銀三十枚を与えたという記事が載っており、古くから当寺に伝わうていたことがわかります。
達磨図県指定重要文化財
(絵画)絹本墨画著色寒山図(けんぽんぼくがちゃくしょくかんざんず)
絹本墨画著色拾得(じっとく)図二幅
所在地会津若松市城東町一番二五号県立博物館
所有者矢車寺寒山・拾得はともに中国唐代の伝説的僧で、脱俗の風をもって知られており、禅画の好題材として、盛んに制作されました。
この寒山・拾得図は、図像の上では惣髪で、口を大きく開けて呵呵大笑しているところに特色があり、表現・技法の上では面貌を若色によって精妙に描写し、着衣の墨の太い線と衣文線に沿って施される淡墨の片暈かしによって大様に描写するところに特色があります。この系統の寒山・拾得図では、中国元代の顔輝筆と伝える東京国立博物館本(国指定重要文化財)がありますが、これは立像で、添景に何も描かれていないのに対して、本図は坐像で、岩や懸崖、木の枝や羅が描かれている点が異なります。
本図は、描写筆致にやや厳しさを欠き柔和になっているところがら、宋元画の寒山拾得図に倣い日本で描かれたものとみられます。制作時期は、作風ことに水墨の表現からみて室町時代初期は下らないと思われ、我が国初期道釈画の展開を知るうえで資料的価値が高く評価されます。
寒山図
拾得図