教育福島0213号(1998年(H10)09月)-030page

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母親が話をするのと先生が話すのとでは、子供の受け止め方が違うということが分かりました。と同時に、先生が児童に及ぼす影響力と、先生という存在の大きさを実感し、身の引きしまる思いがしました。

現在、家庭での教育力がいろいろな形で問題化しています。そんな中で、学校への期待が一層高まっているように思います。

学校では、一人一人がかけがえのない我が子であり、人生の中の一度しかない「今」なのです。子供たちと共に、私自身も子供と一緒に成長できる教師であり、母親でありたいと思います。

(国見町立大木戸小学校教諭)

 

文学からの贈り物

森敏行

 

ることができるのである。これこそ、文学からのかけがえのない贈り物である。

 

一冊の本を読み終えた後、新たに視野が広がった気持ちになる。自分の中で様々な想像力が働き、またひとつ自分の未知だった世界を開拓した感じを覚える。作品の中の登場人物の言動等から自分が経験したことのない新たな喜怒哀楽の世界を経験し、そして人間として持つべき人間性や生き方を心に留めることができるのである。これこそ、文学からのかけがえのない贈り物である。

青少年にとどまらず、大人の社会においても人間性の欠如からの様々な問題を耳にする。なぜ人としてあるべき姿が消えつつあるのか。それは、人間性を育む経験の不足からに他ならない。人間性は経験を通して人の心に生まれてくるものである。喜怒哀楽等の感情を生む様々な経験を通して、人間性が育まれ、人としての生き方を学んでいく。そのような経験は文学を通しても経験できると思っている。登場人物の言動等に感動したり、悲しくなったり、怒りを覚えたりして経験できるのである。しかし、悲しいことに、文学作品、童話、寓話、詩などを読む機会が減り、また親が子供に読んでやる機会さえもなくなりつつあると聞く。私はこのことが人間性欠如の理由の一つとして挙げられるのではと思っている。自分が経験したことのないことでも、文学を通して経験し、自己を磨き上げることができるのである。

学生時代、文学の講義で様々な作品に出会い、自分の新たな視野を広めることができたと信じている。その中で、私が今も教訓にしているのが、フィツジェラルドの傑作"The Great Gatsby"の最後の言葉"We beat on, boats against the current, borne bock ceaselessly into the past"である。私はこの言葉の意味を作品全体を通して考え、「腐敗した社会の荒波にのまれることなく、希望と夢を抱き、絶え間なく挑戦し続けること」と解釈している。私はいつまでもこの言葉を胸に秘め、荒波にも負けることなく、自分の人生を歩んでいきたいと考えている。

金銭至上主義の現代、物質的な贈り物が好まれる。しかし、私は教育を通して、生徒たちに物質的ではなく、生きる上でさらに大切なことを文学を通してプレゼントしてあげたいと思っている。

(県立双葉翔陽高等学校教諭)

 

 

 


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