教育福島0215号(1998年(H10)11月)-037page

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相互の理解が深まり、相手のことをもっと知りたいという能動的な思いが高まっていく。したがって、発達段階を考慮に入れながら、安心感を高め、自分を素直に表現できたり、信頼感を高め、互いの思いを受け入れ合える児童生徒の育成、学級の醸成が大切である。

 

3 思いを伝える技能

友達に対する思いをうまく表現できないことが、対人関係を築けない要因となっている。こうした状況を改善するには、聞く、話す、接するといった人間関係に必要な基本的技能の育成が必要である。ここでの技能とは、単に正しく聞く、話すといったものではなく、相手の気持ちを肯定的に受け止める聞き方、話し方であり、両者に肯定的な感情交流がつくられるものである。

 

三 研究の見通し

 

学級活動の時間を中心に、自己肯定感や他者とかかわりたい思い、思いを伝える技能を高める指導援助を行えば、児童生徒の人間関係をつくる力が高まり、豊かな人間関係が育まれるであろう。

 

四 研究の実際(第二年次)

 

第二年次の今年度は、研究協力校における指導援助の実践を通して、「自己肯定感を高める指導援助」「他者とのかかわりを深めたいという思いが高まる指導援助」の在り方を中心に研究を進める。

 

1 自己肯定感形成のプロセスモデル

自己肯定感の構成要素をもとに、その形成のプロセスを図3のようにモデル化し、研究の焦点化が図られるようにした。

 

図3 自己肯定感が高まるプロセスモデル

 

2 事前アンケートの実施

 

2 事前アンケートの実施

児童生徒の人間関係をつくる力を中心に、その実態を明らかにし、適切な指導援助の方向性を探るために、以下の項目で事前アンケートを実施した(四件法十四設問、記述式三設問)。

《調査項目》

◇ 自己肯定感の程度を捉える項目

◇ 他者とかかわりたい思いの程度を捉える項目

◇ 思いを伝える技能の程度を捉える項目

◇ 人間関係をつくる力が高まるための背景を捉える項目

◇ 学級の雰囲気を捉える項目

 

3 人間関係をつくる力を育む指導援助

児童生徒相互の肯定的な感情交流が促進され、自己理解や他者理解が深化する活動を、発達段階や事前アンケートで捉えた学級の実態を考慮しながら、学級活動の指導過程の各段階に効果的に位置づけられるようにした。

【導入の段階】

安心感を高めながら、以後の活動における感情の表出を促進する。

【展開の段階】

児童生徒の感情交流を促進しながら、自己理解や他者理解を深める。

※ 授業のねらいに迫るための適切な方法、技法を考慮して、〈対話〉〈ロールプレイ〉〈ブレーンストーミング〉などを有効に位置づける。

【終末の段階】

シェアリング(振り返り)の場を設定し、授業のねらいとする感情の明確化や共有化を図る。

 

五 今後の研究推進

 

現在、小学校三・五年生、中学校二年生の三学級で一回目の検証授業を終えたところである。今後は、その授業の成果・課題を分析し、三回目の授業に生かすとともに、日常的な指導援助も行いながら研究の有効性を探っていきたいと考えている。

 

 

 


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