教育福島0215号(1998年(H10)11月)-036page
教育センター情報『窓』
豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究
−人間関係をつくる力の育成を通して−
教育相談部
一 主題設定の趣旨
本県においても、不登校等の問題は年々増加の傾向にあり、対人関係での体験不足や希薄化にその要因が認められる。このような現状から、「人間関係をつくる力」を育成し、ありのままの自分を肯定的に受け入れるとともに、相手の思いを受け止めながら自分の気持ちを表現できるようにすることによって、互いを受け入れ支え合える豊かな人間関係を育むことが児童生徒の自己実現に有用であると考え、標記の主題を設定した。
図1 人間関係をつくる力の構図と人間関係がつくられる4つの段階
二 主題についての考え方
乳児期の母親とのかかわりの中で獲得される「基本的信頼感」を土台とした「自己肯定感」「他者とのかかわりを深めたいという思い」「思いを伝える技能」を人間関係をつくる力とおさえた。さらに、人間関係をつくる力は、図1に示す他者とのかかわりの四つの段階を通して深められると考えた。
1 自己肯定感
認知と感情が、人間の行動を規定する要因であることから、自己肯定感を図2のようにとらえた。本研究では、自己概念を肯定的な「自己理解」、自尊感情を肯定的な「自己受容」と同一義的にとらえた。つまり、肯定的な自己認知と、それによって生じる感情(満足)によって自己肯定感が形成され、他者とかかわろうとする思いが高まり、行動化が促進されるという考えである。また、自己肯定感は、他者からの肯定的な評価や承認によって強化されるものである。
図2 自己肯定感の概念図
2 他者とのかかわりを深めたいという思い
思いを伝え、受け入れ、共有し合う中で、