教育福島0218号(1999年(H11)4・5月号)-027/52page

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ランチルーム

宍戸美登里

宍戸美登里

昨年四月、下郷町も自校給食からセンター給食へと変わった。それに伴い本校は一つの空き教室に新しいテーブルやいすをそろえて「ランチルーム」という空間を作った。それまで各学年の教室でとっていた給食は、全校生と全職員が一堂に会してとることになったのである。

四校時終了と同時に手洗いを済ませた子供たちがランチルームヘと集まって来る。授業中はめったに見られないような生き生きとした表情で……。

全校生と言ってもほんの二十数名。職員を加えても一クラスぐらいの人数なので準備に要する時間もさほどではない。あいさつ当番が前に立つと、にぎやかだった部屋が一瞬静まり「いただきます」と、元気な声が響きわたる。

さあ、待ちかねた給食。始めのほんの数分は黙々と食べる子供たち。しばらくすると、この沈黙を破る「先生、あのね……」が始まる。

前の日の下校途中、川に落ちてびしょぬれになったこと・おもしろいテレビを見て笑いころげたこと・お父さんとお母さんがけんかをしたこと・ゲームで新記録を達成したことなど、話題は尽きない。

子供たちの下校の様子や教師が立ち入ることのできない家庭生活に至るまで、素直にそしてごく自然に教えてくれる。

食べ方を見ても、子供たちに対する認識が変わることもある。

教室でがまんの足りなさを度々注意されていたA男が、「野菜は大きらいだ」と言いながら、目を真っ赤にしてスープの野菜を口に運ぶ姿を何度も見かけた。また、勉強もスポーツも万能、しっかり者で何でも任せて安心のB子が、納豆を目の前にして、箸を止めてうつむいてしまった。教室での動作が遅く「早く、早く」とせかされてばかりいるC男が、手早く後片付けをしている。

ランチルームでは、教室では見られない子供たちの意外な一面が顔をのぞかせている。

この四月から給食時間を五分延長した。ランチルームでじっくりと子供たちの顔探しができることが、ささやかな楽しみとなった。

(下郷町立南小学校教諭)


スポ少と私

佐藤喜彦

佐藤喜彦

「佐藤さん、次の日曜にも試合があるので来ていただけませんか」二男が入団しているサッカースポーツ少年団の保護者会役員からの電話である。現在、私は保護者としてまた指導者として、その少年団の活動に携わっている。

私とスポ少との出会いは、十七年前にさかのぼる。新採用教員として福島市内のA小学校に着任した日、サッカースポーツ少年団の担当であることを校長から告げられた。中学から大学まで運動部に籍を置いていた私にとって、サッカーの指導は、慣れない学校の仕事よりはるかに心安らぐ充実した時間だった。放課後になり団員の声が聞こえると、教室を飛び出し、サッカー指導に校庭へと急ぐ毎日。やがて、休日も指導に明け暮れ、彼女(現在の妻)とのデートを何度もすっぽかし、気まずい関係になることも少なくなかった。

練習は、サイドキック、ボールタッチ、ドリブルから始まり、二対二、三対三、ミニゲームヘと続いていく。毎日が同じ練習の繰り返しの中にあって、「S君、君のドリブルは速いね」と声をかけると、彼は今まで以上に鋭角的なドリブルに挑戦していく。「K君、君のトラップは上手だね」と褒めると、


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