教育福島0221号(1999年(H11)9月号)-006/52page

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提言

指南

塚 本   繁

福島女子短期大学教授
塚 本   繁

 ノストラダムスの恐怖の大王を信ずるか否かは別として、新しい世紀に向けてカウントダウンが始まったこの頃、いろいろ気になる事の一つに「指南する」ということがある。

超ベストセラーの「五体不満足」(乙武洋匡著)程ではないが、去年の秋から静かなブームが続いている評判の絵本がある。それは「葉っぱのフレディ―いのちの旅―」(レオ・バスカーリア著)である。筋立ては、何の変哲もないもので葉っぱの生涯と死の再生の摂理を平易な口調で語りかけている誠に地味なものである。

この絵本は、お父さん族が購入し、それを家族ぐるみで読まれているらしいのである。

そう言えば長いこと「生」は論ぜられてきたが「死」についてきちんと受けとめ語ることが欠落していたように思う。生死一如とか輪廻転生の考え方についても世の大人たちは、明道の師となり、しっかりと指南しなければならない事柄であると考えている。

次に、今世紀の生き証人とも言うべき二人の先達の思潮が気になって仕方がない。

オーストリアの精神医学者ヴィクトル・エミール・フランクル(一九〇五〜九七年)とわが国の代表的詩人で一九〇九年生れのまど・みちおのご両人である。

まどさんは、九四年の国際アンデルセン賞作家賞に引続き昨年は、朝日賞受賞の栄誉に輝いた。童謡の「ぞうさん」をはじめ多数の詩の中身は、どれも生きる指標が読みとれるすてきな言葉で人々の心を把えて離さない。例えば、小学校の教科書にも載っている「くまさん」の詩では"はるがきて/めがさめて/くまさんぼんやりかんがえた/(略)/ええとぼくはだれだっけ/だれだっけ/(略)/くま


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