教育福島0221号(1999年(H11)9月号)-007/52page
さんぼんやりかわにきて/みずにうつったいいかおみて/そうだぼくはくまだった/よかったな"と書いている。誰もが自分探しの旅を経て自分との出合を体験し、自分が自分であることを確信する。このことが自分流に生きる出発点だよと諭してくれているようだ。
一方、フランクル教授は、先の大戦中にナチスによってアウシュビッツ強制収容所で筆舌に尽せぬ非人道的行為の極限に耐え抜き死と直面しつつもなお生きる支えとなったのは何かを語っている。即ち、(一)愛の心の絆をイメージすること、(二)自然の美しさを感じとること、(三)ユーモアのある言葉を交し合うこと、(四)死を自分のものと認識しつつ生きる意欲をもつこと。私流に概括すると以上の四点になる。まさに、生きる意味と意義を強く示唆している。
「生きる力」が教育界のメーンテーマとなって久しい。関係者は、それぞれにそれなりに頑張っておられるが少々力み気味のように感じられる。
「人生に公式なしされど人生に解答あり」という言葉がある。新世紀を拓き担う子どもに対する「指南」の柱となる生きる力を考える際には、それが、何のための誰のための教育なのかという原点に立ち返って虚心に肩の力を抜いて考えてみることと「…おとなはだれもはじめは子どもだった。しかしそのことを忘れずにいるおとなはいくらもいない」(サン・テグジュペリ著"星の王子さま")という切り口から何が大事でどれが小事かを冷静に腑分けすることが肝心な点であると思われる。
何はともあれ、生きる指標に関する指南は、子どもの先輩である大人の生きざまが子どもへの最高の教育になることだけは紛れもない事実である。管中の「百年樹人」と共にわが胸を刺し、脳裡を離れない世紀末の昨今である。
【著者紹介】
塚本 繁・つかもとしげる
〔現職〕
・福島女子短期大学教授
〔略歴〕
・一九三七年生まれる。
・福島大学卒業後、北海道大学研究生(社会教育専攻)
・文部省社会教育局(現生涯学習局)で青少年教育、家庭教育を担当、筑波大学、国立教育研究所等を経て一九九三年から現職
・福島県社会教育委員(〜現在)
・福島県生涯学習ボランティア推進委員会委員長(〜平成十年度)
・地域における「心の教育」専門家会議委員長(平成十年度)
・福島市生涯学習を進める市民会議副会長(〜現在)
・福島県子ども夢プラン推進委員会委員長(平成十一年度〜)
・全国エネルギー環境教育推進委員会委員(平成十一年度)
〔主な著書・論文〕
・「生涯学習・日本と世界」(上・下巻)エム・ティ社
・「学校外ボランティア活動の展開」ぎょうせい(悠)
・「学校週五日制における地域活動の在り方」ぎょうせい(悠)
・「ボランティア活動の教育効果」小学館(高校教育展望)
・「これからの青少年教育」教文社
・「地域学校の創設」福島県教育委員会
・「生涯学習ボランティア論」福島市生涯学習推進本部 他 多数
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