教育福島0222号(1999年(H11)10月号)-034/52page

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研 究 実 践



平成9・10年度 文部省指定高等学校生徒指導推進校

《研究主題》

不登校問題に関する実践的研究

─生徒と教師のコミュニケーションの進め方について─

県立船引高等学校

県立船引高等学校

一 研究主題の設定

不登校は小・中・高等学校に共通の現象で、最近の急激な増加は教育問題だけでなく大きな社会問題となっている。高校における不登校は中途退学につながる割合が高く、適応指導の推進が希求されている。本校でも、年間累積欠席日数が三十日を超える長期欠席者が多数おり、不登校に対する指導援助は緊急かつ重要な課題である。

不登校に陥る原因や理由は複雑多岐にわたっているが、それを追求することを第一義として置くことは実践的見地から有意義とは言えない。まず、必要なことは生徒とのラポールの形成である。生徒が胸襟を開いて教師とのコミュニケーションをとる気持ちが生まれるような指導援助を心掛けることこそ大切であると考えた。

そこで、教師は生徒の健康や生活の安全を確保し、所属感や自尊感情を高める指導を踏まえたコミュニケーションの進め方を創意工夫することで生徒とのラポール形成を円滑に行うことが不登校生徒の指導援助や未然防止に有効であろうと考え、次の研究テーマを設定した。

不登校問題に関する実践的研究

─生徒と教師のコミュニケーションの進め方について─



二 研究仮説の設定

平成九年四月に設置した「研究推進委員会」で本校の不登校に関する現状分析を行った結果、学校不適応生徒の多くは、基本的な生活習慣が欠如し、家庭的にも恵まれない生活環境にあり、1)三食をとることが不十分である。2)夜更かしをしているため朝起きることが容易でない。3)両親の愛情を十分に受けていない。等の報告がなされた。

それらの現状を解消するためには教師の共通理解のもとで、それら生徒に対して学校と家庭への帰属感を与えながら指導に当たるべきであることが確認された。

そのためには、共通の認識を図るための一貫した方向性と、指導援助の基盤となる一つの理論が要求され、協議・検討の結果、A・H・マズローが提唱する欲求階層説を活用することが最も適切であるとの考えにいたった。

不登校生徒は、様々なレベルで人間行動の原動力となる欲求が満たされていない状態にあり、そのために不安や悩みが生じて不適応な状態や神経症的な症状が出たりして、登校しようとする意欲が喪失してしまっているとの分析が行われた。そこで、本研究ではA・H・マズローの欲求階層説を踏まえ、生徒がどの階層の欲求が満たされていないかを確認し、その欲求を満たす指導援助を行うことで生徒とのコミュニケーションを図る糸口を発見することができ、生徒と教師間にラポールが形成されて心の通い合う指導が可能になるであろうと想定し、次のような研究仮説を設定した。

生徒がマズローの欲求階層説のどのレベルが満たされていないかを、コミュニケーションを進めながら確かめ、その欲求を満たすような適切な指導援助を行えば、不登校が改善されるであろう。


三 研究実践の内容

(一) A・H・マズローの欲求階層説の理解を図るために研究推進会議と校内研修会等を定期的に開催して共通理解を徹底する。


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