教育福島0222号(1999年(H11)10月号)-035/52page
(二) どの生徒も不登校に陥る可能性があるとの認識のもと、全生徒を対象に学校・家庭でどの段階の欲求が満たされているか等のアンケートを実施する。それをもとに生徒が抱えている問題点を探り、生徒とのコミュニケーションを通しながら治療・予防・開発的な指導援助を行う。(三) 研究推進委員会は、予防階層説とカウンセリング技法について研究し、全教師がカウンセリングマインドを持って生徒理解に当たれるよう事例研究を進める。
(四) 事例研究会を開催して事例を紹介・研究するとともに、外部講師の指導・助言を仰いで教師の実践的力量の向上を図る。
あらゆる機会にコミュニケーション
スポーツ大会
クリーン作戦(五) 学校不適応対策委員会は、不適応生徒の指導方針の検討や担任への援助に努める。
(六) 生徒指導部等の各部は、定期的に部会を開催し、欲求階層説を活用した適切な活動計画を立案して実践の推進に努める。
(七) 各学年は、学年会・毎朝の打ち合わせ等を行い、学年目標達成に向けた取り組みの中で生徒の欲求の充足を図る。
また、教科担任とも積極的にコミュニケーションを進めて生徒理解を図るとともに、授業を通して生徒の所属や承認の欲求の充足に努める。
(八) 学級・教科担任は、学校生活全般において生徒とコミュニケーションを進める中で、生徒個々の理解に努め、欲求を充足させるための個人指導の充実を図る
四 研究の成果(一) 欲求階層説と理論的学習により全教師が共通の指導援助理論を礎とし、共通認識で生徒理解に努め明確で一貫した方向性を持って適応指導に当たるようになった。
(二) 本校の教師の八割は、本校が初任校または二校目の勤務校であり、比較的教職経験年数の少ない若い教員が多い。未経験の思考や言動を示す生徒たちと接する若い教師にとり、本研究は生徒を理解し心にアプローチする方法を学ぶ良い機会となった。
(三) 教師が常に生徒とどのように関わりあっていけば良いかという意識を持ち、生徒個々の状況把握に心掛け、生徒の感情や意識を踏まえた粘り強い援助指導に努めたことにより、生徒の意識に自己認識や所属感・自尊感情の高まりと、教師に対する信頼感を増した兆候が見られた。
(四) 教師と生徒のコミュニケーションの活性化を図り、生徒個々の抱える悩みや欲求、将来に向けての希望を把握することが指導上効果的であることが理解された。
また、保健室への来室相談者数が激減したことで教師とのコミュニケーションが浸透したと判断された。さらに、退・休学者の割合が減少してきているのもその効果の現れと判断できた。
(五) 生徒の状況や問題について、担任が抱え込むことなく、学年及び関係教師間で情報交換を図りながら対策案を話し合い、指導に当たる姿勢が定着した。場合により、不適応対策委員会で協議・検討の上、早めに関係諸機関や専門家の協力を求める体制ができた。
五 今後の課題(一) 指導理論とカウンセリング技法の理解と習得に努め、事例研究を進める中で、指導法の工夫と改善を図り実践に努める。
(二) 不登校が生じる家庭では、子供と家族の関わり方に問題がある場合が多い。今後も学校と家庭との相互信頼関係作りを促進し、家庭への指導援助にも取り組んでいく。
(三) 中学校との連携や不登校問題に取り組んでいる関係諸機関との協力体制を推進するとともに、大人が不登校を身近な問題としてとらえ、子供たちを健やかに育むための意識作りを行う。
(四) 学校教育に専任のカウンセラーの配置が望まれる。