教育年報1958年(S33)-002/83page
a 勤務評定の実施
30年12月都道府県教育長協議会試案が発表されて
以来部内において検討すると同時にこれを県下に発
表し,特に市町村教委・校長会等関係方面にはかり
試案に対する意見を徴した。
市町村教育委員会は連絡協議会に専門委員会を構
成して組織的にこれを検討し,小中高の校長会にお
いてはその組織の全機能をあげてこれを検討,それ
ぞれ勤評実施に関する積極的な意見を具申した。
かかる過程において勤評実施の年である昭和33年
度を迎えたわけであるが県教委は市町村教委,校長
会等の意見を十分に尊重しかつ最大限にこれをとり
入れ,4月30日福島県立学校教職員ならびに市町村
立小中学校教職員の勤務評定実施規則を制定。つづ
いて5月22日は同実施要領をそれぞれ制定これを発
表した。
勤務評定実施規則により9月20日現在をもって一
斉に実施,10月19日までに市町村教育委員会より県
教委に対して評定結果の報告がなされた。
その間県教員組合においていまだかってない熾烈
な勤評絶対反対,実施規則撤回の闘争が展開された
のであったが市町村教委の公正な判断と各学校長の
良識とによって,全学校全教委が期日までそれぞれ
評定書ならびに報告書を提出完了全国に例の少い円
満な完全実施が遂行されたのであった。
b 勤評反対闘争の厩要
規則ならびに実施要領制定以後若干の期間著しい
交渉のなかった県教員組合は7月18日の福大学芸学部
の教授団によって発表された「勤評に関する声明」
をきっかけとし県教委に対して大規模な集団交渉を
開始すると同時に市町村教委を対象とした地域闘争,
校長を対象とする職場闘争を指令し少からず現場の
動揺を招き教育能率に影響をおよぼすことが案ぜら
れた。
しかし10割一齊休暇を呼号した9月15日の県教組
の統一行動は,関係方面の周到な職場管理と現場教
職員の健全な良識に支えられてほとんど実害を児童
生徒に与えることを避けることが出来た。
県立高等学校教職員組合は県教員組合とは一応別
途の闘争方式をとったのでこれまた生徒の教育に実
害を与えるまでに至らなかった。
その後9・15,10・28の休暇闘争に随伴した行政
処分および賃金カット等の処置に対する組合の闘争
はひき続き仕組まれたわけであるが全体としては組
合の反対闘争は9月15日をピークとして漸次下降の
傾向を示したもののごとくみられた。
c 勤評に対する教育行政機関の動向
県教育委員会は,終始教職員の勤務評定は純粋な
人事管理の事務と観念し,その実施方式については
それぞれの関係者において処理すべきものとして県
民に対し,漸次改善を加えて理想的な勤務評定を実
施せんとする態度で一貫し,委員会,事務局一体と
なってこれが円満な実施に邁進した。
市町村教育委員会は県教委の要望に応じ再度にわ
たり要望書提出を行ったが,規則ならびに実施要領
の制定に際しその要望のほとんどが採択された関係
もあり,当初より勤評実施の態度を確立し,県教育
委員会に協力した。
高等学校長は当初以来校長に対する勤評実施につ
いて可否を論ずることなく教職員の勤評実施につい
ては積極的に建設的意見を提出した。
市町村立小中学校長は勤評試案について意見書を
提出して以来,現場における教職員と市町村教育委
員会との間に立ちながら勤評内容をよりよくする立
場から繰返し数度の意見具申を行ったが,基本的に
は勤評実施に踏みきり,校長の評定義務不存在確認
訴訟を提出するがごとき行動をとる者は見られず期
日を厳守して評定書提出がなされた。
PTAその他一般民間団体も全般としては静観の
立場で終始した。
殊にPTAはほとんど学校長や地教委の要請にこ
たえて中立的態度を堅持し,教組の立場に協力して
事態を困難に導くがごとぎことはなかった。
d 勤評実施以後
第1回の勤務評定は前項までの情勢の中に無事完
全に実施されたが,その後,9・15や10・28等の休
暇闘争に参加した教職員に対し慎重審議の結果停職
1名,減給12名,戒告15名,文書訓告749名,口頭訓
告415名の行政処分を行いさらに参加時刻によって
それぞれ適法な賃金カットを通告した。
県教組は直ちにこれが撤回を県教委に申入れると
同時に別に人事委員会に対し不利益処分の審査請求
を行い同時に裁判所に対し,処分取消を提訴した。
この抗争は33年度内に結末をみるに至らず,34年度
にそのまま持ちこされることとたった。
2.教育委員会の活動
A 県教育委員会において,どのような問題が審議され
たか(33年1月より33年12月まで)
1月定例 昭和32年度末小・中学校教職員の人事に
関する方針について
昭和32年度末県立学校教職員の人事に関する方針
について
2月定例 福島県猪苗代積慶寮使用料条例の一部を
改正する条例案について
学校医公務災害補償に関する条例案について