教育年報1958年(S33)-001/83page
§1 教育行政
1.総 説
昭和33年度は教育委員会制度実施10周年に当る年
であり地方教育行政上からみた記念すべき年であっ
た。またこの年は教職員の勤務評定の実施をめぐっ
て全国いずれの都道府県においても教育委員会と教
員組合が未だかってない闘争を展開した年でもあっ
た。
本県昭和33年度の教育行政を反省するとき同じく
教職員の勤務評定にかかわる県教委と県教組あるい
は市町村教委と各地区教組の交渉を特筆しなければ
ならない。
殊に本県教組は日教組の方針と呼応して当初より
勤評反対の態度をうちたて9月15日日教組の統一行
動において10割休暇による措置要求一大会実施を計
画するなど他の都道府県をしのぐ高姿勢をとったの
であるが,本県教委は委員会事務局不離一体の行政
体制とをもって勤務評定の本質にたつ適切な判断に
より教育行政に筋を通し混乱を最少限度にとどめる
ことに成功した。
この間教育行政に空白を生ずることのないよう年
度当初にうちたてた教育委員会努力目標の実現に向
ってゆるぎない万般の施策が遂行された。
A 昭和33年度努力目標
a 県市町村の一体化により教育行政の推進を期す。
新法施行第3年を迎え,県,市町村教育委員会の
より緊密なる連絡体制を確立し教育行政の一体化を
図るべくつぎの目標をもとに具体的な努力が続けら
れた。
(1)主体的な行政態勢の確立
(2)事務局の強化
(3)執務要領の確立による事務能率の向上
(4)適正な現場管理と関係職員の研修強化
たまたま教職員の勤務評定に関する問題が惹起さ
れ,県,市町村教委が一体となって教育行政に当ら
ざるをえない立場に立たされる結果となった。
このことは県,市町村の連絡提携を促進する契機
となったが同時にまた市町村教育委員会がその地位
と職責を十分自覚させる絶好の機会となった。しか
しこのことは県教委として市町村教委における運営
上の諸問題について専門的技術的な研究,指導を行
う機会を乏しくしたということができよう。
b 児童生徒の学力向上につとめる。
前年までに整備された教育課程を更に実践を通じ
て改善を加える一方徹底的な教材研究をとおし指導
過程の合理化,各種指導技術の調和的適用によって
指導能率の向上をはかり児童生徒の学力向上を目差
した。
しかし勤評闘争等によって各学校の職場には教職
員の研修活動の停滞した傾向もみられたので真にこ
の目標を十分具体化できたかどうかについてはなお
今後の検討にまたなければならない。
c 科学技術教育の振興をはかる。
時代のすう勢に即応して科学技術教育の振興を図
るためこれに要する経費,理科教育設備費504万,
科学技術教育振興費625万を計上するとともに市町
村教委にもその趣旨の徹底をはかり,講習会,研修
会等の事業をとおして教職員の資質ならびに指導技
術の向上をはかり振興策の具体化につとめた。
d 道徳教育の徹底を期す。
新教育の反省として大きく表面化してきた道徳教
育は学校教育法施行規制の一部改正によって33年9
月から全面的に実施されることとなった。県教委は
その趣旨の徹底をはかると同時に実施計画等につい
て具体的な指導を行った。
県教組はこれに対し「官製による道徳教育反対」
の態度をとり一応参加拒否の戦術をとったが一部の
地区のわずかな紛争を除いては講習会の阻止,その
他これが反対のための積極的な妨害活動は見られな
かった。
各部単位に実施した「趣旨伝達講習会」も何事も
なく修了することが出来た。
e スポーツの振興と安全管理の徹底策を講ずる。
国家文教施策と相俟ってスポーツの振興を努力目
標に掲げ特に長期の計画,スポーツ5カ年計画の立
案にかかるほか学校または一般社会のスポーツの健
全育成指導ならびに安全管理について努力した。
教育委員会の努力目標についてはその樹立の過程,
予算との関連,具体化の方法これが評価等について
は今後なお十分検討し真に委員会として努力目標を
掲げる趣旨に合致するような運営がなされなければ
ならない。
B 勤務評定実施と勤評闘争経過の概要
本年度の県教育行政の大きな特色は教職員の勤務
評定の実施と勤評闘争に対する処理の問題であった。