教育年報1958年(S33)-007/83page
3.前進する市町村教育委員会
市町村教育委員会は教職員の勤務評定の実施とか
らんで好むと好まざるとをとわず,それぞれの市町
村における教育行政の責任者として管内各学校に勤
務する教職員の人事管理をいかにすべきかという思
索と判断をせざるを得ない立場に立たされた。
一方日々学校において無心に学ぶ児童生徒と正常
な教育を切望する父兄ならびに地域住民を抱え,更
に一方,県教委の実施規則の制定と教職員組合の撒
回闘争を構えた市町村教育委員会の立場はいまだか
ってない重大な危機であったということができよう。
かかる時流を背景として新法施行第3年目を迎え
た市町村教育委員会は,行政体制その他になお多く
の問題点を包蔵し,あらしにゆられる小舟を想像せ
しめるものがあった。
A 市町村教育委員会運営上の問題点
この項は本年度文部省初中局地方課が全国ブロッ
ク毎の代表七県を対象とした市町村教委の実態調査
の際,本県調査表に見られた問題点または希望意見
をまとめたものである。
a 市町村教育委員会教育長給与が一部市町村を除
いて概ね低額であり,市町村教育行政の志気に影響
をおよぼしている。
b 事務局組織が弱体であって,教育行政能率の低
下を来しているとともに,複雑化,高度化されてい
く地方教育行政に即応できないうらみがある。
c 事務局職員の研修の機会は極めて少く事務執行
の能率化を妨げている。この点の改善工夫が望まれ
る。
d 教職員の人事は直接に学校運営,児童生徒の教
育に影響することであるので,市町村教委,県教委
それぞれの立場をどう調整していくか,その合理化
は今後の問題点である。
e 県教委と市町村教委の連けいは,本県の場合極
めてよく行われているが,市町村教委の主体性の確
保,県教委の効率的な指導助言援助の確立の双方の
立場からして今後なお研究する問題が残されている
f 市町村教委相互間の連絡提携は,連絡協議会の
適正な運営によってきわめて円滑に行われているが
更にその趣旨を高度に発揮し,市町村教育行政の効
率をより高めるためには具体策についてなお研究の
余地は残されている。
g 財務事務に関しては特に意見,希望が多く,教
育効果を高めるための教育予算の編成ならびに執行
について,長,長部局との連携を密にし,相互の理解
の融合をはかっていくことが必要であり,数多くの