教育年報1959年(S34)-114/121page

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程度増加しているが,利用人員と利用冊数の割合は,利

用人員の71%に過ぎない。

 このことは,学生,生徒が単なる勉強の場として「場

所のみの利用者」が多い結果である。 このように,学

生,生徒によって,利用される図書の内容も,学校教育

課程の中に織りこまれた関係図書が毎年ほぼ同じように

利用され,これをくり返している。従って利用者全体の

館内における読書傾向を把握することは困難である。そ

こで一般成人のみの利用図書(個人館外貸出)を調べて

みると,文学,社会科学,歴史,自然科学,哲学書の順

に読まれている。利用された図書の上から見ると,マス

・コミの影響を強くうけているようである。例えば「人

間の条件」などは,最初の1・2部が出版された当座,

殆んど読まれなかったが,マス・コミにとりあげられる

と,爆発的に騒ぎだし,急激に読者が図書館に殺到する

ような例があった。

D 新しい図書館の重要な役割をもつ、読書相談(参考

 事務)は、どのように利用されたか

 今後の図書館の在り方として,地域社会人の生活に直

結する奉仕を重点的にとりあげ,資料を通じ,側面よりの

相談相手となって諸問題の調査研究や,読書相談,指導

等の依頼を,口頭,電話,文書により引受け,親切に,

正確に,迅速に処理することを切実に要求されている。

 本館においても新館舎に移って小規模ながらこの業

務を開設し,利用者の依頼に応じ処理しているが,今年

度の利用状況は,文書によるもの,23件(昨年度は19

件),口頭,電話によるもの一日平均20件前後である。

(記録はとらない。)この実績からみて,今後この分野

を,大いに充実し,積極的なP・Rを行い,一般大衆

に浸とうせしめ,利用者の拡大をはからなければならな

い。

E 図書館施設は、効果的に利用されているか

a,展示室利用状況

 新しい図書館に要求されるものの一つに,もっと気軽

に入館できて,読書ばかりでなく,催物の鑑賞や,新し

い話も聞けるような便利な施設が,望まれている。この

ような役割を果す仕組みが展示室で,本館においても,

一階にこの展示室を設置している。郷土の産業,観光,

美術工芸等の作品,その他の資料を展示して,県民に見

てもらおうとする者に対し無料で利用せしめているが,

今年度の利用状況は別記のとおりである。

b,自由読書室利用状況

 図書館法の第三条,第六項に読書会,研究会,鑑賞

会,映写会,資料展示会等を主催し,及びその奨励を行

うこと。と示されているが,この趣旨にもとづいて昨年

8月より閉館後毎月1回レコード・コンサートを開催

し,音楽愛好家の好評を博し,盛況をきわめている。ま

た休館日には,自由読書室にて,研究集会,講習会,講

演会等を開催するとともに,各種団体の会合にも開放し

ている。

c,本館見学者来館状況

 県下の学校,社会教育団体等の本館見学状況は,別記

のとおりであるが,その都度,図書館奉仕活動について

普及と啓蒙につとめて来た。

F 今後の問題点

a,学生,生徒の利用対策について

 毎年,学期末,進学受験期を迎えると学生,生徒が,

公共図書館を唯一の勉強の場として殺到し,一般社会人

に図書館を開放する余地をなくしてしまうことは,公共

図書館本来の使命に逆行することとなる。この傾向を打

開せざる限り公共図書館の発展は望めないので,この対

策として下記に示す事項の実現を期したい。

(1)学校図書館の充実促進を呼びかける。

(2)図書館と学校側との連絡強化。

(3)学生,生徒に対する積極的な読書指導。

(4)本館の小・中学生室の合理的運営と収容能力の拡大

b,進学受験準備中の浪人が,公共図書館を唯一の勉強

の場として望んでいることは,現役の学生,生徒以上に

切実なものがある。毎年増加する高校及び中学生の浪人

組は,ただちに公共図書館の固定した利用者となってい

るが,この現象は全国的なものであり,ひとり本図書館

だけの問題でなく,社会問題としても大いに考慮する必

要がある。

c,一般成人利用者の吸収拡大について

(1)個人貸出の開拓。

(2)施設の利用普及と各種会合の開催。

(3)参考事務の強化充実。

d,施設の改善と環境の整備

(1)閲覧室内の採光と換気の改善。

 現状の閲覧室では長期間(9月末より3月末まで)日

光の直射をうけ,常にカーテンをかけねばならない。従

って換気が不充分のため,公衆衛生上,好ましくないと

の批判もあるので,これらについて改善を施し,利用者

の要望に応えたい。

(2)快適な読書環境の育成

 冬期間中は,毎日満員の状態が続くので,館内が混雑

し,読書環境も著しく阻害される傾向があるので,今後

は最も快適な読書環境を育成したい。

(昭和34年4月から昭和35年2月まで)

職業別 職 業 別 利 用 者 数
比率
中学生 7,401   7,401 7.3
高校生 37,994   37,994 37.6
大学生 23,389 (4,253) 27,642 27.3
教育家 369 (173) 542 0.5
官公吏 1,871 (1,128) 2,999 3.0
銀行・会社 1,814 (717) 2,531 2.5
農  業 363 (18) 381 0.4
商  業 473 (288) 761 0.7
工業技術者 528 (236) 764 0.8
その他 3,852 (494) 4,346 4.3
主婦・無職 9,536 (702) 10,238 10.1
児  童 5,556   5,556 5.5
93,146 (8,009) 101,155 100%


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