教育年報1961年(S36)-191/193page

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におさめ,郷土資料の紹介,県下の読書会の活動状

況,図書館めぐり,書評,購入図書の目録,図書館

問答等,すべて内容が図書館,公民館,読書グルー

プの会員に身近なものをとりあげて編集し毎月発行し

ている。

 この館報は,図書館に関係のある人々や官公署,県

下の高校,大学等の他に,県下の図書館,公民館,読

書会に県教委出張所を経て送付している。

(2) 文化事業実施状況

 最近新築される図書館は,殆んど館舎の周辺に,公

会堂とか音楽堂,あるいは博物館,美術館といった総

合的施設を抱含している。この総合施設の活用によっ

て図書館の機能が効果的に発揮でき,地域の文化向上

に役立つわけである。

 本館はこの点については,公会堂,公民館が隣接し

比較的好条件を備えているわけであるが,従来,とも

すれば,これを等閑に附したきらいもないではなかっ

た。

 そこで本館でも今年度は,文化事業の一環として,

作家井上靖氏を招き文化講演会をかねて「著者と読者

の集い」を下記のとおり開催したが,地域の人々から

大変喜ばれ来年も是非このような催しを開いてほしい

との強い要望があった。

 文化講演会  「著者と読者の集い」

 期日 昭和36年11月30日午后6時

 場所 福島市公会堂

 講師 作家 井上靖  演題 「史実と小説」

    立教大学教授 小松伸六  演題 「モデルと小説」

 聴衆,約2,000人,終って講師を囲んで座談会

    参加者100人

 7 館外奉仕活動実施上の問題点

(1)ブックモビール運営上の問題

 読書層の開拓には,読書会の育成が最も重要な要素

とされている。しかし読書会の主体となるべき青年層

は,農閑期ともなれば,現金収入の道を求めて都会や

近接地区の町工場,会社に出稼ぎのため殆んど離村す

る風習が強くなってきている。そのために折角誕生し

た読書会も脱落者が目立って多くなりつつある。

 そこで図書館としても,今後は婦入層,あるいは組

織をもつ青年団の文化部,または職場の文化サークル

というようなあまり変動の少い集団を対象に読書グル

ープの育成を押し進めるのが,永続性もあり成果も期

待できるようである。

 このことは,ひとりブックモビールばかりでなく,

貸出文庫,青少年巡回文庫にも共通している問題でも

ある。つぎにブックモビールの機動力を活用した奉仕

活動は効果的だが,本県のように全国屈指の広大な面

積を有する地域では僅か1台の自動車で全県下を公平

に県民の期待する奉仕は容易でなく少くともあと1台

が必要である。特に本館では大型車のため末端地区の

運行は困難である点からみて,小型車を1台増加して

それぞれの地域を合理的に運行すれば,ブックモビー

ル本来の活動が実施でき成果も大いにあがるものと考

える。

 自動車も資料も充実し読書会の育成を呼びかけたと

ころで,指導助言をあたえるべき職員が,読書会活動

や読書普及についての研究とか体験といったものが不

充分では,所期の目的は達成できないので,今後の課

題としては奉仕活動に携わる職員の研修が大切である

(2) 貸出文庫及び青少年巡回文庫

 分館活動地域の拡大化をはかる必要に迫られている

とかく分館の所在地周辺地は奉仕活動も活発であるが

遠隔の地にはどうしても手が延びないのが実情で,分

館奉仕区域の再検討をするか,あるいは資料,人員の

裏付を考慮するとかして,分館の奉仕の強化充実を期

す必要がある。

 青少年巡回文庫も一応工夫改善を施したが,少くと

も年3回程度ブックモビールを活用して図書の更新と

巡回の援助を行ない,つとめて研究集会等自主的に開

催して,問題点を持ちより,もっともよりよい方法を見

つけ出すような運営を実施して利用の効果を高めたい

(3) 文化事業と図書館活動のPRについて

 文化事業も全県下を対象に実施し文化面に地域差の

生じないような,計画のもとに,関係団体と緊密な連絡

をはかることが先決問題で,独り図書館だけでは成果

を期待しでも無理である。そのためには常に他の団体

と協力体制を整えておくことも重要である。

 館報「あづま」のPRする役割も大きいが,とかく

末端団体,あるいは利用団体の手元に届かない場合も

多い。今後はこの「あづま」を読書会等に直送するよ

うにしてでも効果を高めたい。

(4) 県下の読書会実態把握の調査実施

 なにごとも,事業の対象となる組織とか集団の実態

について科学的とまではいかなくても,確実性のある

資料なくしては,とかく円滑に物ごとを運べない。特

に読書会の動静等その実態を把握するのには容易では

なく,単なる推定では失敗することが多い。

 今後は常に読書層の分析とか実態を的確な資料によ

って掌握し,それに応じた計画なり方針なりを樹立し

たい。

 それには県教委出張所や地教委の協力を求めなけれ

ば不可能である。この点に留意して協力に応じられる

ような裏付となるものを考慮したいものである。


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