教育年報1962年(S37)-147/169page

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県立図書館

 第1節 概  要

1 民衆の大学へ

 流行語を追うわけではないが,県立図書館のビジョン

は,と聞かれたら,われわれは,文字どおりの意味で,

「民衆の大学」になることだ,と答えることができる。

 忘れもしない,昭和24年の春,当時軍政部から,「県

立図書館は,いわば民衆の大学であるから,施設もスタ

ッフももっと充実しなければならない。」という意味

の,強い指示があった。

 それから10年の後に,ようやく新しい建物ができ,と

にもかくにも県立の唯一の社会教育施設として,図書館

資料をとおして県民に対するサービスを行なってきたわ

けである。

 この辺で,つまり,37年度にのぞむにあたって,もう

一度,県立図書館の性格とか任務といったようなもの

を,互いに確認しあって前進しよう,という空気が強ま

った。そこで,試案ではあったけれども,次のような表

を作成して,われわれ自身の業務の反省資料とした。

県立図書館の性格と任務

2 まず資料館として

 ここには二つの問題があるようである。

 1 資料の集め方

 2 図書費のこと

 資料の集め方については,大別すると「納本」および

「収集」の二つがあって,もしこのほかに敢えて拾うなら

ば,「委託」を含めての「寄贈」ということであろう。

 ここで取り上げることは,「納本」のことである。戦

前および戦時中は,余りに言論の自由,出版の自由など

が抑圧され,検閲制度などもあって,たいへん苦しい経

験をもっている。戦後はその反対で,誰もが自由に発言

し,誰もが自由に出版できる。しかしその反面,折角公

開の目的で出版されたものが公開の代表的機関である公

立図書館に納本されることなく,単に個人の手に渡され

るだけで,公開の目的が充分に達成されなかったきらい

がある。

 幸い県立図書館においては,3年前から,知事部局,

県教委その他の県段階における機関の協力を得て,いや

しくも公開の目的をもって県費をもって印刷されたもの

は,すべて県の出納室をとおして県立図書館に送られて

くる。

 これは単に現在の県民に利用せしめるだけでなく,将

来の県民にも利用させようとする願望に基づくものであ

る。これと同じように,本県の市町村および民間におけ

る印刷物が,少なくとも公開することを前提としている

ものについては,県立図書館に一部納めていただきたい

ものである。

 最近では,無名の寄贈者も増えてきている。

(その一例)

 私がかつて愛読した本です。そんなに汚していないと

 思いますが貴館をとおして施設の図書室にでも納めて

 いただければ望外の喜びです。

          (ヘルマン・ヘッセ著作集)

 次に図書費の問題であるが,これは図書館協議会の答

申の中で再び問題になるので,ここでは全国都道府県立図書館

の県民一人あたり僅かに2円弱だということと,

本県はこの平均額にも満たぬということのみを記してお

くにとどめる。

3 奉仕館として

 ここでは三つの問題があるように思われる。

 1 主なる対象のとらえ方

 2 特許または調査研究のための資料についての相談

 3 サービスの在り方

・冬期間,温い部屋を求めて学生たちが県立図書館に集

ってくる。そこで,県立図書館側としては,古い机や椅

子をもち出してきて,展示室から特別参考室までも開放

し,一般成人の利用者に影響を興えないように,という

配慮をした。ところが,坐席を増やしただけ学生が増え

たのではなく,坐席の数を上まわって学生が増えたので

ある。つまり,それだけ一般成人が尻込みして,県立図書館

から遠ざかったということである。これではいつま


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