教育年報1964年(S39)-057/232page
人材の登用。の3点があげられ,この基本方針の貫徹と
重点事項の実施に関係者の努力が払われたのである。次
にその方針の抜すいを掲げる。
昭和39年度末小中学校教職員人事に関する方針
福島県教育委員会
教育に対する県民の期待と要望にこたえ,学校教育の
刷新充実をはかり,本県教育水準の向上を期するために
は,教職員組織の充実強化が行なわれなければならな
い。
本委員会は,市町村教育委員会と緊密な提携協力のも
とに,下記方針に基づき年度末教職員人事異動を行なう
が,これが実施に当っては,広く県民各位の理解と,教
育関係者の積極的な協力を切望してやまない。
記
一, 基本方針
(一) 全県的な視野にたって,適材を適所に配置し,教
育効果の向上をはかる。
(二) 教育の機会均等の理念に立脚して,地域差・学校
差の解消につとめ,各学校の教職員組織の充実と均
衡化をはかる。
(三) 教育委員会の自主性を堅持し,厳正公平な人事を
行なう。
二, 重 点
(一) 優秀な教職員の確保につとめる。
(二) へき地学校の教職員組織の充実を期するため,都
市・平地,へき地相互間の交流を促進する。
(三) 新進有為な人材の登用をはかる。
三, 実施方針
以下署
2 人事異動の具体方針 (特色)
(1) 人事異動の具体方針は人事実施要項に定められる
が,昭和39年度末人事の特色は,何といってもへき地
交流に重点を置いた人事が進められたことであろう。
へき地検の人事の刷新は戦後いち早く叫ばれ,現在
までその努力が払われてきたところである。特にここ
数年は県内の地域をA・B・Cに区分して交流を促進
してきたが,へき地勤務者に対する経済的,精神的な
優遇の裏付けに乏しく,その強力な推進を阻む面がな
かったわけではなかった。しかし昭和39年度末人事に
おいてはこうした面の隘路がある程度打開され,相当
力強く交流を推し進めることができたのである。
すなわち,昭和39年度の途中においてへき地勤務者
の加給制度が確立され,更に年度末人事においては,
へき地派遣制度が明文化されたことにより,へき地校
に赴く教職員に希望と勇気を与えることができ,従っ
て人事操作も幾分容易となり,交流が活発化したとい
うことができる。
これが実施に当っては,先ず地域区分の修正から行
なわれたが,これには市町村教委・校長会,更に出張
所長の意見を徴し,不合理を是正した。
へき地派遣制度は,都市または平地の学校に勤務す
る教員のうち成績優秀な中堅教員(30才から40才まで
の者で,へき地教育に熱意を有し,身体強健で指導力
のある者)を選んでへき地校に派遣し,その者のへき
地検における勤務実績の如何によっては,将来抜てき
人事等の優遇措置を行なうというもので,そのねらい
はへき地教育の振興に外ならない。
この制度は,昭和37年度末人事から設けられたもの
であるが,特別に力を注いだものではなかったので昭
和39年度末人事実施要項には,これを明文化し,この
趣旨を一般に周知させ,広く県下全域から優れた人材
を求め派遣することとしたのである。その選考は慎重
を極め,各管内から推せんされた候補者について全体
会議で協議に協議を重ねて決定されたもので,派遣さ
れた教員は必ずや立派な実績を収めてくれるものと確
信ずる次第である。
派遣校は人事委員会指定のへき地校で,市町村教委
と協議して決定されるが,昭和39年度末には13校13名
で将来は28校28名になる予定である。
(2) 具体的方針の特色として,次に校長・教頭の資格要
件の設定をあげることができる。
校長・教頭の任用資格は従来不文律なものはあった
が,年令を除き明文化されたものはなかった。昭和
39年度末人事においては
校長については
(1) 年令は40才以上53才までを原則とする。
(2) 小一普免または中一普免を所持するものであ
ること。
(3) 教職年数15年以上の者であること。
(4) 教頭または教務主任の経験2年以上の者であ
ること。
(5) へき地校または農山村5年以上の経験を有す
る者であること。
教頭については
(1) 年令は35才以上45才までを原則とすること。
(2) 小一普免または中一普免を所持することを原
則とする。
(3) 教職10年以上の者を原則とする。
(4) へき地または農山村校の経験を有することを
原則とする。
との資格要件が定められた。
校長・教頭に昇任する者は,特に人物・識見・指導
力・健康等のすぐれた者でなければならないが,また
その資格も重要視されるものであり,豊かな経験が必
要なことは言うまでもないところである。特に強調し
たいのは,へき地検または農山校勤務の経験を持つこ
とである。新進気鋭の新任校長はほとんどへき地校ま
たは農山村校に赴任してもらわねばならないのである