教育年報1964年(S39)-065/232page
9) 行政処分取消等請求事件 (最高裁昭38年オ第413号)
もと岩瀬郡白方小学校助教諭神長テル子の臨時免許
状が失効したことに伴ない県教育委員会は免許状の失
効は当然教員の身分を失なうとして昭和32年3月31日
付で退職せしめた。………(イ)
もと田村郡守山中学校講師小林タケを県教育委員会
は昭和32年4月1日付で石川郡須釜中学校に転任せし
めた。………(ロ)
上記(イ)(ロ)を内容とする事件で神長は臨免失効による
退職処分を違法として,小林は転任処分は退職勧奨に
応じない報復人事であるとして,昭和32年5月14日県
人事委員会に不利益処分の審査請求をなし,その後,
県人事委員会の判定,福島地方裁判所の判決,仙台高
等裁判所の判決,何れも両者は敗訴したため昭和38年
2月10日最高裁判所に上告したものである。
(昭和40年4月22日最高裁判決があり,神長,小林は
何れも敗訴し,判決が確定した。)
(2) 不利益処分審査請求事件
1) 懲戒処分取消請求事件 (加藤林外27名)
行政訴訟事件の1)と同内容のものであって,訴願前
置主義の立前から昭和33年12月28日県人事委員会に対
し不利益処分の審査請求をなしたものである。
2) 懲戒処分取消請求事件 (白岩正吉外52名)
行政訴訟事件の2)と同内容のものであって,訴願前
置主義の立前から昭和35年1月26目県人事委員会に対
し不利益処分の審査請求をなしたものである。
3) 懲戒処分取消請求事件 (小川昭二外7名)
行政訴訟事件の3)と同内容のものであって,訴願前
置主義の立前から昭和37年3月2日県人事委員会に対
し不利益処分の審査請求をなしたものである。
4) 転任処分取消請求事件 (五十嵐秀男外4名)
もと大沼郡会津高田中学校事務職員五十嵐秀男外4
名から昭和36年度末転任処分はその意に反する不利益
な処分であるとして昭和37年5月25日県人事委員会に
対し審査請求をなしたものである。
2 進行状況等
(1) 行政訴訟事件
1) の懲戒処分取消請求事件については30数回にわたる
争点整理の準備手続を終了し現在事実認定のための証
人調の段階にある。原告被告とも百数十名にわたる証
人を申請しており,判決までには相当の年月を要する
と考えられる。なお,この事件の争点は勤務評定反対
一斉休暇斗争は争議行為に該当するか否かの点である
が,勤務評定反対一斉休暇斗争にかかる地方公務員法
違反事件で,東京,福岡,和歌山,大阪各地裁は何れ
も「争議行為に該る」と判示していることは注目すべ
きことである。
2)3)の懲戒処分取消請求事件は現在まで十数回の準
備手続を行ない,まもなく証人調に入る予定である。
なお,2)と類似の公務執行妨害罪にかかる刑事事件
で,山口地裁(昭38.11.28)は「研究協議会開催の
問題は職員団体との交渉の対象とはならない。」と判
示しておることは当然のこととは言いながらやはり注
目すべき判決といえるであろう。
4)6)の旅費支払請求事件はこれまた十数回の準備手
続を行ない,その間,原告請求の1件ごとの旅費請求
内訳書が正確か否かを精査するとともに,被告福島県
としては,すでに原告の請求金額は弁済ずみであるの
で債務は存在せず,また法律生活の安定を図る上から
いっても信義誠実の原則に違反するものであると主張
している。これまた,まもなく証人調に入る予定であ
る。
5)の退職処分無効確認事件は,現在証人調中でまも
なく結審,昭和40年度中に判決が出る予定。争点は地
方公務員法に明文の規定のない期限付任用が許される
か否かの点であるが,山形県の類似事件が最高裁(昭
38.4.2)で判決になり「地方公務員の身分保障の
趣旨に反しない限り期限を付することに特別な合理的
事情があり本人自ら自由な意思に基づいて承諾してい
る限り可能である。」と判示している。
7)の給与支払請求事件は現在仙台高裁で証人調中で
ある。この事件の争点は純然たる法(労働基準浩第
24条)の解釈の問題である。即ち山口忠重ら第一審原
告は,労基法第24条の賃金全額払の原則は,昭和34年
2月の給与債権を受働債権として相殺することを禁止
している趣旨と主張し,福島県は内閣法制局見解に基
づき,労基法第24条は給与の過不足調整の相殺まで禁
止している趣旨ではないと主張している。なお,同趣
事件で東京地裁,前橋地裁はおのおの異なる判決を出
しており,また学説も相半ばし法律論としてむづかし
い問題である。
8)の分限免職処分無効確認事件は現在仙台高裁で証
人調中であるが,まもなく結審,昭和40年度中に判決
がでるものと考えられる。
(2) 不利益処分審査請求事件
1)2)の事件について現在証人調中,3)4)の事件も近日
中に証人調に入る予定であることを付記するにとどめ,
詳細については紙面の関係もあり省略することとする。
第6節 学校防火
1 本県における学校火災の実態
昭和21年度以降昭和39年度までの学校火災は別表1の
とおりであるが,小学校45,中学校25,高等学校22,盲