教育年報1964年(S39)-069/232page
2 学校火災の原因
(1) 本県学校火災の原因
以上88件中不可抗力のものとして類別できるもの,原
因不明(捜査中を含む)29,放火13,類焼6,雷火1,
計49,他は何らかの原因による失火であることが明らか
である。
なお,東京都区部の昭和24〜37年の14か年間の小・中
・高校の出火原因別統計図表を掲げて参考としたい。
(昭和21年〜昭和39年10月までの学校火災について)
(2) 原因の特徴
イ 原因不明(捜査中も含む)のものが比較的多い。
昭和21年から39年9月までの学校火災88件中28校約
32%発生件数の1/3に近い数が原因不明または捜査中と
いうことになっている。これに比して東京都は450校
中30校。およそ7%が原因不明となっているにすぎな
い。
建物が広大であること,早期発見が比較的因難であ
ること,消防機関が東京都内のようには整備されてい
ないなど悪条件が多く,捜査当面の苦労のほどが伺わ
れるわけであるが,学校火災を少くする対策として
も,早朝発見に関する工夫をこらして原因不明の学校
火災を少なくすることが必要であろう。
ロ 放火による学校火災が13%を示しているということ
である。
全件数のほぼ15%。「原因不明」を除いては,「炭
火の不始末」とともに,トップの発生率である。
東京都の場合,出火原因中最も多いのは放火で,全
火災の34%,不明確となっているもののうち放火らし
いものおよび弄火をも含めれば45%に達するというこ
とになっている。もっとも東京都という大都市の特殊
事情もあろうと思うが,あわせ考えるとき,放火によ
る学校火災の比率の大きいのに気付かざるを得ない。
現に最近の学校火災,原町一中,三春中などは放火で
あった。
社会情勢がいよいよ複雑化し,精神的または性格的
異常者の数がましつつある今日,この「見えざる放火
魔」とどう対決していくかということは,ゆるがせに
できない問題と思われる。
ハ その他の原因については,あきらかに学校当局等の
管理上のミスによると思われるもので,東京都または
全国の火災原因と共通する傾向を示している。
これらは,管理者または当直員の注意によって完全
に防ぎ得るものといわなければならない。
3 防火対策および指導
(1)学校防火対策委員会の設置
相つぐ学校火災の防止対策の1つとして本庁事務局内
に学校防火対策委員会を設置して教育長の諮問機関と
し,県立学校および市村町立学校における防火管理の実
態と学校火災の要因を検討し,これを改善防止する方途
を審議し,強力な防火対策を樹立して学校無火災を推進
しようとした。
しかし,種々の事情でこの学校防火対策委員会の実質
的な活動は不十分であった。今後計画的活動を組織する
ことが必要である。
(2) 不燃性学校建築の促進
学校は子弟を教育する場所であるから広々とした清潔
な環境で火災や風,地震などに対しても安全なものでな
ければならない。それにしてはなんといっても鉄筋コン
クリート造りが理想的である。
福島県内小中学校建物造別比較表 (39.5.1現在)
県教委財務課調
木造 鉄筋 スチール その他 計 校舎 小中 360,208 15,089 5,109 498 380,904 94.6% 4.0% 1.3% 0.1% 100 195,809 13,288 4,018 632 213,747 91.6% 6.2% 1.9% 0.3% 100 屋台 小中 44,477 1,696 4,501 0 50,674 87.8% 3.3% 8.9% 0 100 25,252 4,287 13,301 238 43,078 58.6% 10.0% 30.9% 0.5% 100
最近建てられる校舎が,鉄筋造りが多くなっているこ
とは,この見地からも喜こばしいことである。しかし全
国の学校建物は現在木造が約88%,鉄筋コンクリート造
が12%の割合となっているが,本県の場合さらに低く,
木造その他が95%,鉄筋がわずか5%となっている。今
後建築される学校は不燃性建物とするよう指導されなけ