教育年報1964年(S39)-099/232page
第6節 科学技術教育
近代の科学技術の進展に伴なう,科学技術教育の必要
性はきわめて大きく,施策として進められているその振
興方策は次の三つである。
1 施設・設備の充実
理科教育振興法ならびに産業教育振興法による国庫補
助がその具体策で,多額の国費と地方費が各学校の関係
施設・設備費として注入され,漸次その充実をみている
のである。
2 教育内容の改善
教育課程の改訂がこれで,現在の学習指導要領は小学
校が昭和33年,中学校が34年,高等学校が35年に改訂さ
れたもので,それぞれ3年後から実施されている。
5 現職教育による教職員の資質の向上
昭和33年から5か年計画による理科実験講座,昭和38
年から5か年計画による理科教育講座をはじめとして,
数多くの科学技術教育関係現職教育が実施されている。
しかし,これらは一時的なものであるため,常に継続的
な研修計画をもち,それを実施することによって累積的
に指導力の向上を図ることが必要となった。そのために
は,恒久的な独立の研修機関が必要であるがそのため昭
和35年度から5か年計画による国庫の補助を得て,各都
道府県に「理科教育センター」が設置されている。本県
でも本年度その実現を見ることができ,関係者の大きな
喜こびとなっている。
その他,文部省と共催または県単独で講習会や研究会
を開催したり,あるいは産業教育内地留学生を派遣して
関係教職員の資質の向上に努め,また,福島県教職員研
究奨励金の交付により研究の助成を行なってきている。
以上のうち,研究奨励については現職教育の節で,高
等学校産業教育実技講習会や内地留学生の派遣について
は産業教育の節で詳述されているので,この節では理科
教育と技術・家庭科教育に関する事項を述べることにす
る。
1 理科教育振興法の実施
理科教育振興法に基づく理科教育設備費補助事業は,
理科教育振興法に基づく基準の70%達成をめざして,昭
和40年度までの10か年充実計画が実施されている。
小学校,中学校,高等学校,特殊教育諸学校につい
て,昭和39年3月31日現在における理科教育振興法に基
づく基準総額と対照してみた場合,その充実の状況は,
A表,B表に示したとおりである。
学校種別毎に県合計でみると,A表の合計欄でみられ
るとおり,高等学校を除き50%を超えているが,A表B
表でわかるとおり,一般的には,分校ならびに単級・複
式学校の充実率は極めて充実の度合いが低く,特に小学
校の分校の24.7%,中学校の分校ならびに2学級以下の
学校の18.9%がめだっている。
ただ,小学校の分校の場合は,低学年のみをおく学校
(例えば分校は3学年まで,4学年以上は本校に収容す
るが如く。)が相当数あり,このような学校は,当然基
準品目の相当部分を必要としないものである。したがっ
て,A表の小学校について,分校を除外して考えた場合
には,その充実率は55%となる。
高等学校については,その充実率が50%をわってお
り,昭和38年3月31日現在の充実率と比し,充実率のの
びは少ないが,これは,高等学校生徒急増対策による学
校の新設,分校の本校への昇格,生徒数の増加等による
特殊事情があることを考えなければならない。しかしな
がら低充実率であることは,教育課程の完全な実施に危
倶をいだかせるものであり,特に昨今大きくとりあげら
れている科学技術教育の振興のためには,大幅な充実対
策がのぞまれるところである。
次に昭和39年度の理科教育設備費補助事業の実績にも
とづき,昭和40年3月31日における学校種別ごとの充実
率を推定すると,小学校57.6%,中学校59.5%,高等学
校51.7%特殊教育諸学校55.4%もそれぞれ若干づつ上回
った率になることが予想される。しかしながら,国の計
画する,昭和40年度末の充実率70%にはまだへだたりが
大きく,今後ともその充実には大いに努力を続けていか
なければならないと考える。
A 理科設備の学校規模別基準総額,充実総額,現有総額 (昭和39.3.31現在)
小学校
区分 1
1学級〜5学級
2
6学級〜23学級
3
24学級以上
分校の全部 計 基準総額 9,925,740 264,579,750 39,790,720 59,258,010 373,554,220 充実総額 4,877,100 140,626,340 27,118,690 14,626,180 187,248,310 充実率 49.1 53.2 68.2 24.7 50.1 現有金額 4,771,870 135,186,800 25,755,860 14,545,060 180,259,590 現有率 48.1 51.1 64.7 24.5 48.3