教育年報1966年(S41)-183/194page

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 1) 目録ケースはカウンターの前に移して、利用者と職員

  の便宜を計った。

 2) 従来貸出しを実施していなかった高校生に対して貸出

  しを実施した。受験のための学習に追われている彼等に

  果してどれ程利用するだろうかという懸念はあったが、

  案に相違して、多くの利用者があった。

 3) 貸出冊数の1人1冊1週間というのも、増冊を希望す

  る利用者が多く、所蔵状況からみて、可能な限り2冊ま

  で貸出しをテストケースとして実施してみた。

 この結果貸出しの数がのびたことは当然としても、利用者

にとっては、最も利用し易いこの方法が今後の図書館サービ

スの大きな柱となるであろうし、館内閲覧とは館外に持ち出

せない図書(参考図書等)の閲覧と児童室とになるのではな

かろうかと考えられる。

 以下表によって利用状況についてみてみる。

 1 利用状況

(1) 利用者

  利用者総数(表2)106,405人と昨年度の9万台を上ま

 わったが、これらは殆どが学生・生徒によるもので、一般

 は30,165人と30%にすぎない。昨年指定席実施により学生

 生徒の席借り的入館者が減少したとみられたが、再び上昇

 してきている。わが国の住宅事情からみれば、学習のため

 に机と椅子冷暖房を借りに来る学生・生徒も正常な利用者

 と見なすべきだという考えもあるようだが、こういう考え

 に妥協しているところに公共図書館の発展が阻害されてい

 るのではなかろうか。公共図書館はその図書館を維持して

 いる全住民の図書館であり、年令や身分によって図書館サ

 ービスに差があってはならないことは当然すぎるくらい

 当然である。特に次代をになう児童青少年に対する図書館

 サービスは重要で、児童青少年(学生・生徒を含んだ)に

 も積極的な図書館サービス(図書館資料を使ってもらい、

 貸出しも行なう)をしなければならないが、机と椅子と冷

 暖房だけの利用を図書館サービスと考える誤りをおかして

 はならない。

  月別の利用状況は昨年と変りなく、12月〜2月が最盛期

 になっているが、特に今年度は8月に休暇で帰省した学生

 の利用が多く、内容も郷土に関するもの、古い資料を利用

 しての統計等、大学生もアルバイト時代を過ぎて、本来の

 勉学に立ち帰ったかのようにみられた。

(2) 読書傾向(資料の利用状況)

  利用総数(表4)47,718冊のうち34%の16,411冊が貸出

 になってきた。館内における利用は参考図書は勿論のこと

 ことやかましく記入云々を強いないので、数字にはあらわ

 れていないが、実際にはこの数字をはるかに上まわってい

 るのは当然である。

  分類別等の利用分布は毎年そう著しい変動はない。次に

 ここ2〜3年の間に目立って多くなってきたのは、資料

 の複写利用である。これは、利用者がそれぞれの研究目的

 に従ってコピーの要求が急増したので、図書館側としても

 これらに対処できるような機械を備えつけなければ、現代

 の利用者の要求を満たし得なくなってきたということであ

 る。

(3) 館外利用登録者

  その人数(表5)1,396人は高校生の162人を含んで昨

 年とほぼ変りないということは、実質一般の利用者が減少

 していることを示すわけで、これは利用者が、利用したい

 図書がないからやめたのかどうなのか、一度利用した客を

 逃がすということは図書館サービスのどこかに利用者の要

 求を満たし得ない要因があるものと考えられるので、図書

 館としてはこれが原因の探求、その対策に努力をいたさな

 ければならない。先にもふれたように高校生の利用は図書

 館が思ったより多く、しかも利用態度もよく、この層の本

 来め図書館利用には相当期待が持てるし、将来の利用者と

 して大いにのばすよう意を注ぎたい。

 2 レファレンス・サービス

 統計のとり方も昨年までは一応すべて記入するという方

式をとったために数は単位ひとつ多かったが、今年度からは

いわゆる読書相談といったものは、はぶくことにしたので、

(表6)のような数になっているが、質問の内容等は年々多

岐にわたり、資料の不足が痛感される毎日である。参考室には

図書を相当公開したので、なれた利用者は自分で調べること

も出来るが、館内閲覧といわれるものは、今後この分野にな

るであろうことを予測すれば、部屋と資料と職員の配置につ

いて、研究しなければならない。

 3 過去5カ年間の利用状況

 (表8)をみて大きく二つのことが今年度特に目立つこと

である。一つには一般の利用者がはしめて3万人台になった

ことと、二つには館外利用図書冊数が16,000冊台に上ったと

いうことである。児童室についてはいろいろの説もあるが、

人員、利用冊数からみても、たとい本そのものが簡単だから

冊数が多いとしても、次代の国民の読書という観点から意を

注ぐべきは当然と考えられる。

表2 利用者数   昭和41.4〜42.3
職業別人員 館内(人) 館外(人) 計(人) 構成比(%)
児童 4,989   4,989 4.7
中学生 6,642   6,642 6.5
高校生 42,863 1,347 44,210 41.6
大学生 16,606 3,793 20,399 19.2
教員 356 215 571 0.5
公務員 1,689 1,692 3,381 3.2
銀行・会社員 1,692 1,329 3,021 2.8
運輸・通信業 333 614 947 0.9
農業 171 10 181 0.2
商業 246 224 470 0.4
工業・技術者 137 311 448 0.4
自由業 221 112 333 0.3
その他 16,208 833 17,041 16.0
主婦 94 398 492 0.5
無職 2,333 947 3,280 3.1
94,580 11,825 106,405 100.0


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