教育年報1968年(S43)-181/197page
(2) 蔵書点検
昨年の一般資料にひきつづき、43年4月1日から8日間
にわたって、佐藤文庫13,370冊、放江文庫849冊、
井筒文庫271冊などの特種資料の点検を実施し、確認整備を行な
った。
第3節 館 内 奉 仕
1 利用状況
(1) 利用者数
昨年の利用状況の推移から資料を更に積極的に利用をは
かれる体勢に館内配置を施すべきであるという考えに立つ
て、公開図書室の大幅な模様替えを実施した。即ち、公開
図書数を従来の約2倍の12,000冊に増やし、閲覧席をはな
して、利用者が図書を探すにも、読書するにも、お互に阻
害されないようにしたことをはじめ、雑誌を1ヵ所に集中
し、ソファーを置いて、楽な姿勢で自由に手にとれるよう
にしたこと、閲覧用目録は部屋をはいってのすぐ左側壁面
に配して、利用者、職員ともに引きやすいようにしたこと
等である。この結果有効な空間スペースも生じ、せまい建
物をいっぱいに使用するというつめ込み体勢が緩和され、
ゆったりと寛いだ雰囲気で図書館を利用できるようになっ
たことは、大いなる前進と見てよい。
利用者総数においては前年と大きな変化はないが、館外
個人貸出者が前年に比し、4,834人多い17,980人と急増した
ことなどは、後述する手続上の簡略化もさることながら、
やはり利用者が自由に見れる図書を多くしたことに最大の
要因があると考えられる。→(表1)
(2) 読書傾向(資料の利用状況
各部門別に見て、雑誌を除いて、すべて1,000冊台を越
えたことは従来なかったことであり、特に従って地域性と
いうこともあっての故か。比較的少なかった自然科学、工
学、産業、語学等の部門もおしなべて、上昇してきている
ことは、やはり高度に成長した現代社会生活において、それ
らを必要とされることのあらわれでもあり、反面図書館側
としても、従来収集にあたって弱かったこれらの部門に対
する研究の成果のあらわれであると見られる。文学と同様
児童図書の利用の大きいことは、利用する児童の数から見
れば、非常に大きい割合を占めている。児童本なる故にば
らばらめくるからと言ってしまえばそれまでだが、「現代
の子供は本を読まない」という説もあるにしろ、押しつけ
られた学習の外にこうした利用状況を見るにつけ、特に母
親が子供のために貸出を希望するのが多い現状を見るにつ
け、"児童に対する図書館奉仕"の問題は館の性格を云々
するよりも、取り組まなければならない今後の重要な課題
であろうと考える。→(表2)
(3) 館外個人貸出登録者
館外個人貸出の手続をするのに、図書館へ3度も足を運
ばなければならないということでは、住民のための図書館
であるとは言われないし、またいかに厳重な書類上の手続
を経させたところで、返却しない人もあることもあるとい
うことで、要は図書館を利用する場合は計画的に年間を通
じて利用するということは望ましい姿かも知れないが、切
羽つまって図書を借りたいが故にかけつける利用者も少な
くない。こうした場合に何か身分を証明する書類でも持っ
ていれば、即座に貸出を受けれるということであれば、図
書館の利用価値、存在意義に対する利用者の認識も深まり、
これが契機となって利用の拡大へつながることも考えされ
る。こうしたことから、手続の簡略化をはかった。即ち身
分を証明する書類(身分証明書、運転免許証、保険証等)
を提示して、自筆で申請書に記入してもらえば、ただちに
貸出券の発行ということにした。登録者は前年に比して
1,103人増の2,793人と急増した。然し、その内容は高校
生の増加ということが目立つ。即ち、前年度は全体の15.7
%であったものが、28.8%、それに大学生の42%、各種学
校生6.6%と勉学を目的とするものが77.4%を占めている
ことは一般人の利用に対するPRの不足もさることながら、
またまだ成人の生活に図書が入り込める社会になっていな
いことをあらわしているものとも考えられる。然し、館側
としてのPRに対する手段は明年度において十分加えて参
らなければならないと考える。と同時に未来の利用者とし
ての児童に対する奉仕のあり方をも公共図書館として、前
進する方向へ持っていかなければならないと考える。→
(表3)
2 調査相談事務(レファレンス・サービス)
利用者が図書館資料をより効果的に利用できるよう援助す
ることは、また来館できない人に対しては、所蔵する全資料
を十分に活用して、求める要求に応えるということは現代の
新しい図書館活動の中で不可欠の仕事であり、本年度は当館
において行なったこの業務の概要は次のようになっている。
(1) 回 答 事 務
直接来館者により、あるいは電話、文書等によってなさ
れる相談・調査依頼の問い合わせば、記録票に記録された
ものによれば総件数427件で、その内訳は表4のとおりで
ある。このなかで、本年度特徴的だったのは、社会全般の
明治百年記念行事の流行に関連して郷土の人物に関する問
い合わせが目立って多かったことである→(表4)
(2) 特許関係サービス
当館は会津図書館とともに県内2ヵ所の特許公報類公開
閲覧所に指定されている。明治42年12月から所蔵している
実用新案公報をはじめ、特許公報は明治43年7月から、商
標公報は明治43年1月、意匠公報は昭和8年9月から所蔵
して、閲覧およびレファレンスにあたっているが、本年度
の利用状況は表5のとおりである。特に本年度は複写サー
ビスの強化によって、迅速に利用者の要求に応えられるよ
うになったことは、今後の利用の伸びを促進するものと考
えられる。→(表5)
(3) 複写サービス
情報の占める役割がますます大きくなりつつある現代社
会の中で、情報を求める人に応じること、あるいは積極的
に情報を提供することは図書館の重要な機能の1つである。
複写サービスが要求され、また喜ばれているのもこの意味
からであるし、またそれは当然の結果であろう。当館では
昨年度より"エレクトロニック・リコピー"を備えつけ、