教育年報1969年(S44)-239/241page
1) 第1年次 (昭和42年度)
実態調査の実施
小、中、高校を対象に、実験機械器具の現有状況、使
用上の問題点等についての調査をおこなう。
2) 第2年次 (昭和43年度)
調査結果を検討する
上ざら天びん、電解装置等11品目について、問題点を
分解し、その対策を研究する。
第2年次までの調査および研究の結果を研究報告書
(その1)にまとめ、各学校に普及する。
(3) 本年度の概要
1) 実験学校による事例の収集
小、中、高校、各1校の実験学校を設定し、授業を通
しての問題事例の収集ならびに前年度までに研究した問
題点解決策の一部についての生徒の反応事例を収集した。
実験学校および実施した内容はつぎのとおりである。
ア 小学校 実験学校 福島市立余目小学校
〇 顕微鏡観察学習 (5年)
学習内容 「水中の微生物」
〇 光の屈折の実験と光学用水そう (5年)
学習内容 「光の屈折」
中学校 実験学校 福島市立北信中学校
〇 電解装置 (1年)
学習内容 「水の成分」
〇 電流計・電圧形 (2年)
学習内容 「電流と電圧との関係」
ウ 高等学校 実験学校 県立福島西女子高等学校
〇 クリノメーター ・走向傾斜実習台 (1年)
学習内容 「地質調査」
2) 各機器の問題点とその対策についての研究
前年度に引き続き、本年度はつぎの19品目について調
査検討し、その対策を研究した。
ねじマイクロメーター、電気式ストップウオッチ、接
眼マイクロメーター・対物マイクロメーター、サーミ
スタ温度計、電流計、電圧計、講義用検流計、回路試
験器、直視分光器、気体潤滑体運動実験器、単巻可変
変圧器、放電管、直流電源装置、PH計、真空管電源装置、
光合成実験器、呼吸実験器、天体投影機、毛髪湿度計
3) 報告書の作成と配付
1)、2)の研究結果をまとめ「理科教育振興法による機
械器具使用上の問題点とその対策・その2」として、各
学校に配付した。
2 理科教育に関する所員の研究
本年度はつぎのようなテーマについて研究した
〇 温度計の使用条件による示度変化について 佐藤亘
温度計は一般に精度の低い計器であるが、加えて、使い
方によって大きく影響されやすい。そこで、理科実験で多
く使用されている棒状温度計について、その使用条件によ
ってどのように影響されるものかを具体的に調べた。
〇 磁石のつくる磁界の測定について 野地勝位
磁石の磁界を定量的に測定するための装置を自作し、こ
れを使用して各種の磁石の磁界を求めるとともに、磁界間
にはたらく力についての手がかりを得ようとするものである。
〇 光電子のエネルギー測定とプランクの定数 柴田宣教
光電管の振動数の違った光を当て、飛びだす電子を逆電
圧をかけ抑制し、そのエネルギーを測定する。光の振動数
と光電子エネルギーは比例することを実験的に見いだし、
その比例定数がプランクの定数であることを知る。
〇 銅の酸化と酸化第2銅の還元実験の考察 花沢繁
標題の実験について、定量的に取り扱うための実験方法
や実験の所要時間などを検討し、効果的な方法および指導
について考察を加えた。
〇 溶媒間におけるよう素の分配比の測定と平衡関係の指導に
ついて 大和田寅弥
平行定数測定の教材としてよう化カリ水溶液と四塩化炭
素間におけるよう素の分配比を測定した。また、よう化カ
リウム水溶液の濃度を変えた場合や臭化カリウム水溶液を
用いた場合のヨう素の分配比の変化などを教材化の立場で
検討した。
〇 ショウジョヴバエの活動や飼育について 佐川清美
小学校理科の新指導要領で、新たな素材の一つとしてシ
ョウジョウバエがあげられる。このショウジョウバエの活
動や飼育の方法について教材化の立場から二、三の実験を
試みた。
〇 シャジクモchara Brauniiを材料とした実験 星与喜
シャジクモを材料として、節間細胞に見られる原形質流
動や刺激に対する反応など、刺激生理上の二、三の問題に
ついて教材化の立場から検討してみた。
〇 摺上川の滝について 石井善十
摺上川の滝の分布を調べ、さらに滝の形態(落差、河幅、
滝壷の深さ)、浸食の状態、滝の成因などについて考察を
試みた。
〇 ポリエステル樹脂塗料による塗装について 小池昭
ポリエステル樹脂塗料について、取り扱い上の問題点に
ついて検討を試みた。
2 教育相談と参観
県内の小学校、中学校、高等学校、県外の理科教育センタ
ー、および学校等から、文書または来所により、理科実験法、
施設・設備、材料等について61件の相談があり、参観は24件
(280名)であった。
3 広 報
本県、理科教育の向上を図る目的で理科教育に関する調査・
研究から得た結果は
〇 所報 第15号〜第18号
〇 紀要 第5号
〇 理科教育振興法による機械器具使用上の問題点とその対
策に関する報告書
〇 長期研修生研究報告書
を発刊し、小学校、中学校、高等学校、その他の機関に配布
その普及につとめた。