教育年報1970年(S45)-047/260page
2. 日本育英会奨学制度
本会は政府からの借入金を主体として、これに返還金、育
英寄付金等を加えて運営している国家的育英機関である。各
県の教育委員会内に支部があり、県内の中学校、高等学校を
対象に奨学生の採用、補導、奨学金の貸与、返還等の各事務
を行なっている。
(1)奨学生
奨学生は、高等学校、高等専門学校、大学、大学院およ
び国立工業教員養成所に在学する生徒、学生その他表1に
該当する者で、在学校の校長、学長から推せんされた者か
ら採用する。
(2)奨学生の採用
表1のうち県支部が取り扱うのは高等学校の一般および
特別貸与奨学生の在学者採用ならびに高等学校、高等専門
学校、大学および教育特別貸与奨学生の予約採用である。
1)高等学校一般貸与奨学生
高等学校に在学する生徒で、学業、人物ともにすぐれ
ながら、経済的理由によって修学困難と認められる者で、
学校長から推せんされる者について、支部選考委員会を
経て採用される。
貸与月額1,500円で募集は4月と9月の年2回である。
2) 高等学校特別貸与奨学生(在学者採用)
高等学校に在学する生徒で、学業、人物ともにすぐれ
ながら、経済的理由によって修学困難と認められる者で、
学校長から推せんされる者について支部選考委員会を経
て採用される。
貸与月額3,000円、募集は年1回で4月上旬。
卒業後一般貸与奨学生の貸与月額(1,500円)相当額
を一定期間内に返還すれば残額は返還免除となる特典が
ある。
3) 高等学校・高等専門学校特別貸与(予約)奨学生
中学校第3学年に在学する生徒で、学業、人物ともに
優秀で進学希望を有するが、経済的理由により進学を断
念ずることのないよう、あらかじめ奨学生の予約採用を
中学在学中に行ない、高校・高専枝進学後直ちに本採用
となる。貸与月額は高等学校が3,000円、高等専門学校
は自宅通学者は1〜3年が3,000円、4〜5年が6,000円。
自宅外通学者は1〜3年が4,500円、4〜5年が10,000
円である。
卒業後一般貸与奨学生の貸与月額(1,500〜3,000円)
相当額を一定期間内に返還すれば残額は返還免除となる
特典がある。
採用は中学校長の推せんにより、面接のうえ支部選考
委員会を経て予約採用される。募集は年1回で4月上旬。
4) 大学特別貸与(予約)奨学生
高等学校最高学年に在学、または卒業後1〜3年以内
の者で、翌年度に大学進学を希望する者を対象とする。
貸与月額は自宅通学者が6,000円、私立の場合は、
9,000円、自宅外通学者が10,000円、私立の場合は、
15,000円である。返還免除の特典があり大学一般貸与
奨学生の貸与月額(3,000〜5,000円)相当額を返還す
れば残額を免除し、または免除職(小・中・高校の教諭
その他)に一定年限就けば全額が免除となる。
採用は高等学校長の推せんにより、面接のうえ支部選
考委員会を経て予約採用される。募集は年1回4月上旬。
5)教育特別貸与(予約)奨学生
義務教育教員の資質向上に資するため、教員としての
資質優秀な学生を国立大学教員養成学部に誘致すること
を目的とする制度。対象は前記4)同様であるが、面接は
行なわず、高等学校長の推せんにより支部選考委員会を
経て予約採用される。
貸与月額は目宅通学者が6,000円、他は10,000円で
ある。4)との併願は認められない。
返還免除の特典も4)に同じである。募集は年1回4月
上旬。
(注)この適用をうける私立の大学の教員養成を目的と
する学部に、立正女子大学教育学部初等教育、中等
教育課程がある。貸与月額は自宅通学者が9,000円
他は15,000円である。
(3)奨学金の返還
奨学金の返還は、卒業の6ヵ月後から20年以内に年賦、
半年賦の方法で行なうが、病気、経済的理由によっては、
申請することによって返還猶子が認められる。その他職場
返還制度があるが、これは各事業所単位で、返還義務の有
する者の返還金を毎月徴収し、一括して返還する。福島県
は、小・中・高校および教育委員会関係機関が実施してい
る。
また、返還免除には次のようなものがある。
1)死亡、不具、廃疾等により返還能力を失なった時は、
申請により免除される。
2) 大学の学生であった者が、小・中・高校等の教育職に
一定年限従事した場合、一部または全額免除される。
3) 大学院の学生であった者が、大学や特定の試験所、研
究所、文教施設で教育または、研究の職に一定年限従事
した場合、上記2)同様免除される。
(4)奨学生の補導
本会の事業が国費で営まれており、奨学生の成績には社
会の期待がかかっていることを全員に自覚させるため、本
会と奨学生の関係を単に金銭的にとどめず、精神的なつな
がりをもたせ、充実した生活を送るよう種々の方法によっ
て補導している。これらの方法として「面接・相談・座談
会」「学業成績・健康・生活状況の調査」 「成績不振者督
励」などを行ない機関誌"育英"を年2回発行している。
また、奨学生の外部組織として、卒業した奨学生によっ
て結成された「育英友の会」の全国的な組織があり、各支
部と一緒に活動している。