教育年報1974年(S49)-291/303page

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 第3節 館内奉仕

 直接利用者に奉仕する係として、閲覧貸出、調査相談、児童

奉仕と三つの窓口を設けてサービスを行うことは近代図書館

の当然とるべき姿であるが、限られた人員でこれらの奉仕を

円滑に行うためには、各職員の個々に課せられた仕事の量か

らしても容易ではない。不本意ではあるが、奥まった狭い児

童室の資料を一般公開図書室に併置し、資料を増やし、親子

ともども利用し得るようにした。もちろん単独の部屋を設け、

専任の担当者を置くことが望ましいが、全体的な業務の流れ

から当分このような方法を取らざるを得ない実状である。こ

れを補うという意味ではないが、現代の子供たちに対して欠

けている日本古来の民話、童話の語り聞かせとして、月に一

回ではあったが、研究実践家岡野宗光氏を招いて、土曜日の

午後「民話を聞く会(ぼっこの会)」を開催したが年間を通し

て毎回70名ほどの児童が集まり、最終的には児童がお互いに

話をして聞かせるほどになった。このようなことは職員とし

ても実施できるようにすることが必要であり、今後十分職員

自身の研修を行うべきものと考える。

 一般利用については、特に著しい変化を見ることはなかっ

たが、一般の利用はやはり新刊書に集中したこと、調査相談

としては、資料の複写が年々増大してきており、今年も20〜

30%の上昇を示している。また館外個人貸出については、冊

数増と期間延長が館界の実状となっており、そのレベルまで

合わせるよう努めなければならない。

  1 利用状況

 利用者数として最も確かにつかみ得る「館外個人貸出登録

者」については、学生・生徒数が450人減っているが、他は

昨年より上回って、総体で約200人減っている。また登録手

続きを月別に見ると、4月から9月までの上半期が当然のこ

とながら、3,084人と70%に達し、下半期は1,265人と29%

になっている。4月は更新するものが多く、半月の開館日で

666人と最高を示し、8月は夏休みに入った児童、生徒の利

用が多くなっている。成人については、年間を通して平均化

している。

 利用者数も昨年と変わりはない、年間271日の開館で、1

日平均136人の直接の利用者となっているが、調査相談室に

おける参考図書、新聞、雑誌等の利用者は数字に出ないので、

座席利用の学生・生徒と合せると300人以上が利用している

実状である。利用図書冊数についても同様のことが言える。

結局、館外個人貸出、書庫から請求によって貸出した者の数

字だけで、少なくともこの2倍の冊数が利用されている。

  2 調査相談業務

 年々著しい利用の伸びを見せてきており、図書館の利用が

一般に理解されたことと喜ぶべきであるが、その内容も、郷

土福島県に関する県外からの依頼等は、当館の資料だけでは

応じえず、またコピーして郵送するなど職員の負担は一段と

多くなってきている。また県内類縁機関からの相互貸借も目

立ってきている。

 3 複写業務

 年々増加の一途をたどり、遂に2,000件を越えるに至った。

その資料は新聞、参考図書、郷土資料、一般図書が多く、調

べものをする場合の便利さは、学生生徒に限らず、すべての

利用者に行き渡り、図書館奉仕の完全な一分野となった。こ

のために資料が同一人に占有されることなく、回転も早く、

利用者にとっては、このうえないサービスを受けれるわけで

あるが、資料の痛みは避けることができず、特に大型本の参

考図書等について新しい悩みが生じてきている。

 4 展示会の開催

○ 県内拓本展(故安藤十二氏作品)5月〜6月

県内に存在する句碑等を拓本したもの十数点。

○ 故堀江繁太郎氏遺作展 7月〜8月

故人の絵日記で戦前の満州国、終戦後の日常生活を風物誌的

に見ることができ、懐しいものであった。

○ 農業関係図書資料展 9月〜10月

主として当館所蔵の資料によって、わが国の農業を歴史的に

眺めようとした。

○ 美術図書資料展 11月〜12月

美術の秋にちなみ、所蔵の豪華美術本を展示し、併せてPR

を図った。

○ 福島の俳句集展 1月〜2月

当館所蔵の俳句資料を展示し、その目録を作成して、利用へ

の効果を高めた。

 表1 利用者数(昭和49.4〜50.3)
人員
区分
館内利用
(人)
館外個人
貸出(人)
計(人) 構成比
(%)
公開図書室の
利用者数
調査相談室の
利用者数
1 勤め人 1,931 5,782 7,713 209 5,606 2,107
2 自家営業 295 397 692 1.9 360 332
3 主婦 118 1,996 2,114 5.8 1,952 162
4 無職・その他 162 698 860 2.4 698 162
5 学生・生徒 2,544 11,667 14,211 38.6 12,045 2,166
6 児童 17 11,151 11,168 30.4 11,151 17
5,067 31,691 36,758 100.0 31,812 4,946

(注) 1 開館日数 271日

   2 1日平均利用者数 136人

   3 自己の資料持ち込みによる座席利用者は含まな

    い。

表2 利用図書冊数(昭和49.4〜50.3)
区分
分類別
館内利用
(冊)
館外個人
貸出 (冊)

(冊)
構成比
(%)
公開図書室の
利用冊数
調査 相談室の
利用冊数
0 総記 1,393 998 2,391 3.3 872 1,519
1 哲学宗教 296 1,312 1,608 2.2 1,316 292
2 歴史・地誌 2,100 2,380 4,480 6.2 2,381 2,099
3 社会科学 3,596 3,794 7,390 10.3 3,831 3,559


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