教育年報1975年(S50)-033/303page
ア、 期 日 昭和51年1月26日
イ、 場 所 県庁西庁舎11階会議室
ウ、 内 容
(ア) 専門調査員会経過報告について
(イ) 専門調査員会報告書の作成について
(4) 答 申
昭和51年3月9日
福島県教育委員会 殿
福島県後期中等教育審議会
会長 斎藤初四郎
福島県公立養護学校の適正配置
について (答申)
昭和50年7月28日付けをもって、当審議会に諮問のあ
った標記について、別紙のとおり答申いたします。
(別 紙)
福島県公立養護学校の
適正配置について
前 文
本審議会は、去る昭和47年1月14日県教育委員会より諮問
をうけた「福島県特殊教育諸学校の拡充整備について」の答
申をした。
県教育委員会では、この答申をうけて「福島県特殊教育諸
学校拡充整備計画」を策定し、昭和48年4月から県立盲学校
県立ろう学校の整備統合を実施するとともに、国立療養所福
島病院に隣接して県立須賀川養護学校(病弱・虚弱)の設置
昭和49年4月には、西郷村立西郷養護学校(精神薄弱)の県
立移管を実施した。
このほか、難聴学級、弱視学級、県判別就学指導会議及び
在宅心身障害児巡回訪問指導員制度を設置するなど、心身障
害児教育の拡充については、その実績を一応評価することが
できる。
国においては、昭和48年1三月20日政令第339号を公布し、
心身障害児教育の最大の課題である養護学校の義務制を昭和
54年4月1日から施行することになり、本県としてもこれに
対処するため、この施行の日以降、県内において養護学校へ
就学義務を負うことになる保護者の子女を就学させるに必要
な養護学校を設置しなければならない。
本県における心身障害児教育が拡充されたとはいえ、現状
においては、なお、すべての養護学校対象児を就学させ、そ
の能力・適性等に応じた教育を保障するための養護学校が十
分整備されているとはいえないので、施設・設備はもとより
教員養成、教育内容、教育方法のいっそうの充実を図って養
護学校義務制への円滑な移行に備える必要がある。
本審議会は、諮問をうけて以来、今日まで以上のことをふ
まえて検討を重ね、ここに答申をとりまとめる運びとなった
が、これらの問題の審議にあたっては、心身障害児教育に精
通しておられるかたがたを「専門調査員」に委嘱し、細部にわた
る調査研究を願い、さらに関係各方面の貴重な意見を十分に
参考にしながら慎重に検討を重ねてきたものである。
この間、文部省では、政令第339号の公布に続いて「重度
・重複障害児に対する学校教育の在り方について」特殊教育
の改善に関する研究会より報告をもとめるなどして国の方針
も着々と固められつつあるので、審議の過程においては、こ
れら国の施策も十分考慮したところである。
1 公立養護学校適正配置等についての
基本的考え方
養護学校の義務制をひかえ、本県における養護学校の適
正な配置及びこれに関連する諸問題を解決するための基本
的考え方について述べる。
すべての心身障害児の教育を保障するためには、対象児
の障害の種別・程度及び医療的、介護的、社会的条件等に
対応する多様な教育の場と柔軟で弾力的な教育措置など既
成の学校教育の概念にとらわれないことが必要である。
医療施設、児童福祉施設に入所している児童・生徒につ
いては、当該施設との連携を図りつつ必要に応じて施設整
備を行い、特に、重度・重複障害児の場合は、医療、福祉と
一体となってその教育をすすめる方途や訪問教育等さまざ
まな教育形態を検討しなければならない。
このように児童・生徒の状況に応じた教育を一人一人
に具体的に正確かつ適切に行うためには、障害の検査、
診断及び就学指導体制をいっそう整備する必要がある。
心身障害児の就学指導に当たっては、児童・生徒の心身
の障害と程度を教育的観点から判定しなければならないが
その結果は、児童・生徒の教育の場の決定、または法律上
の就学義務の内容が定まるものであり、慎重を期さなけれ
ばならないので、障害の判定は、各方面の専門家による合
議機関でなさなければならない。
心身障害児教育における早期発見、早期教育は、その重
要性が常に強調されているところである。これは多くの心
身障害は発達障害としてとらえられ、発達を促進する時期
としては、早ければ早いほど効果があるといわれており、
二次的な障害を防止する意味においても重要なものである。
しかるに、本県の障害幼児の教育機関は、ろう学校幼稚
部を除いて、ほとんど設置されていない状態であり、また
一般の幼児教育体系の中においても十分配慮されていると
はいえない。
早急に障害幼児の教育の場を設け、医療、福祉と連携を
とりながら適切な診断・判定のもとに治療、訓練、教育を
意図的、継続的に行う機関が必要である。
また、心身障害児教育を考える場合、幼児教育とともに
義務教育段階と分離して考えることのできない義務教育以
後の教育の問題がある。
これについても心身障害児の生がいを通じて独立自活を
目ざす生活指導、職業訓練等一貫した処遇が行われるよう
きめ細かな配慮が必要である。
「教育は人にあり」ということばは、古くて新しいことばである。
特に心身障害児教育は、未開拓の面もまだ残されている
教育であり、すぐれた教員による教育内容、教育方法の絶
えざる研究開発がなされなければならない。