教育年報1976年(S51)-282/309page
このほかに、福島市の故小野崎正明弁護士の遺志により、
子息芳正氏から寄贈を受けだ法律関係の図書、雑誌は合計2
万冊あり、4月搬入し、とりあえず今年度は書目を作成し、
寄贈手続きを完了した。その内容は法律関係図書、雑誌、判
例集、一般図書等で、
図書扱いとしたもの 4,040冊 6,591,070円 (評価額)
雑誌 〃 16,003〃 3,335,800円 〃
となっており、明年はこの整理作業に当たらなければならな
い。その主なものとしては、
大審院民事判決録(縮刷版) 10巻 25万円
〃 刑事 〃 ( 〃 ) 12巻 25万円
法学協会雑誌(明治19年から) 50万円 等
法学部を有する大学図書館でも無い貴重なものが含まれてい
る。評価額は神田市場の価格をもって算出した。
第3節 館 内 奉 仕
図書館奉仕の重要な部分を占める、児童に対する奉仕をや
はり独立すべきであるとの考えに立って、一階正面軽読書コ
ーナーをこれにあて、軽読書コーナーは、二階新聞閲覧コー
ナーといっしょにした。これによって、現館舎の利用体形と
しては、もっとも、効果的な形になった。更にグループ利用
の談話室も公開図書室の隣りに配して独立させ、館外奉仕の
書庫部に相当する部屋を、事務室に隣接させて運営を円滑に
した。
図書館の部屋の配置は、利用者がいかに便利に利用できる
かということを第一に考えてなされることは当然であるが、
20年前に建てられた現館舎の構造をもってしては、利用者フ
ロアー、書庫スペース等、その機能をじゅうぶんに発揮する
には狭いだけでなく、業務の流れをスムーズにするための、
職員の居住性ということからも、これからの図書館サービス
に即応できる館舎の新築が急務であろう。
1 利 用 状 況
昨年に比し、大きな変動はみられないが、児童室を独立さ
せることにより、また寄贈による大幅な新しい資料配架のた
めに、児童書の利用が増えていること、調査相談室の利用が
のびていることとが目立っているが、人員はほとんど変わっ
ていない。
利用の中心をなす館外個人貸し出しについてみると、公開
図書室の冊数は、一昨年の52,220冊から48,113冊に落ちて
いる。これは、資料の新鮮さが失われていることにもあるだ
ろうし、また最近の公共図書館の貸し出し冊数、期間等が数
冊で2週間というところもでてきていることから、資料の新
鮮さに加えて、こうした方法論をも変えて行かなければなら
ないであろうと考えられる。
また、登録人員にしても4,000人台というのが、ここ数年
の動かない数字であり、県立といっても、福島市在住者が大
半を占めている現状かへ僅か2%にすぎないが、ブック・
モビールのサービスを行わない県立の場合は、その所在地の
利用者は、ほぼこの程度の数字であるようである。もしこれ
らの数字を大幅にあげようとするなら、資料あるいはサービ
ス方法に思い切った手を加えなければならない。利用者数、
利用図書冊数、貸し出し登録者数の詳細な数字は〔表1・2
・3〕のとおりである。
2 調査相談業務
図書館の上手な利用の仕方も一般に知られるようになり、
調査研究のための利用が年々増大の一途をたどっている。そ
の内容は、もちろん郷土福島県に関するものが、約半数を占
めるが、特に電話による依頼が多くなっており、それらはま
たコピーサービスを伴って、職員の仕事の量は著しく増大し
ている。
また、相互貸借にしても、北日本図書館連盟が作った規程
では、その郵送料は借り受け館が負担するものであったが、
最近は国立国会図書館をはじめ、貸しだすときは自館持ちと
いう傾向が多くなってきており、少なくとも県内図書館相互
館においてはこうしたとりきめも改める時期に来ているもの
と思われる。
特許公報類も、公開公報の発行によって、急激に量が増え
収納スペース、検索等頭を痛めている実情であり、古いもの
については、保管方法、場所等をも、将来保存するにして
も、効率的な配架措置を今から考慮しておかなければならな
い。→〔表4・5・6・7〕
3 展 示 会
郷土の生んだ作家、当館所蔵の豪華本、館報「あづま」の
表紙に使用した作品も50回にも達したので、これらをたどっ
てみることにし、3種の展示会を催した。
当館所蔵のもの、あるいは関係者の好意によって借用した
もの等であったが、若松賤子、佐藤健等はあまり知られてい
ない人たちでもあり、来館者の関心をさそった。
○ 館報「あづま」に見る名作のふるさと展
館報表紙の写真で紹介した本50余点を展示した。
○ 県立図書館所蔵豪華本展
「手漉和紙」 毎日新聞社 \ 8万
「煙霞帖」 浦上玉堂 〃5万
「江戸火消錦絵集」 岩崎書店 〃2.4万等
○ 高村智恵子資料展
生誕90年にあたるので、関係資料を展示した。
○ 若松賤子資料展
没後80年に当たる。会津若松市生まれ、英文学を学び
「小公子」の訳者として有名。東京の磯崎氏、岩本記念
館等からも協力をいただいた。またこの展示がきっかけ
となり、今春「若松賤子」が出版された。
○ 佐藤健遺稿展
福島市笹谷の生まれ、旧制福島中学を卒業後、作家を
志し、米国から欧州に遊学する。コクトー、ジョイス等
とも交友があり、作品は未発表のままに終わっているが
彼等からの書翰等が目をひいた。
○ 野口英世伝記展
生誕100年に当たり、出版されている伝記50余展を展
示した。また民報連載の北篤「野口英世」の原稿をも展
示させてもらった。