教育年報1981年(S56)-188/308page
という三段階がとられる。
1) 分布調査
開発地内の詳細分布調査を行い、遺跡の保存対策の
資料とするもので、表面調査・試掘調査に分けられる。
表面調査は、国営総合農用地開発事業母畑地区
(約1,104ha)・東北横断自動車道予定地内(約1,040ha)・
会津農業用水事業地区(約216ha)について実施した。
試掘調査は母畑事業地区内26遺跡・
広域農業開発事業阿武隈中部第2地区45遺跡・
国営総合農用地開発事業矢吹地区31遺跡・
会津農業用水宮川地区2遺跡について実施した。
2) 開発機関との保存協議
国営総合農用地開発事業母畑地区・矢吹地区、
広域農業開発事業阿武隈第1地区・第2地区、
会津農業用水事業、県営ほ場整備事業(県内各地区)・団体営ほ
場整備事業など、農用地開発事業に関するもののほか、
国道4号拡幅、県道拡幅及び新設、
東北電力原町火力発電所建設、日本国有鉄道、日本道路公団、
日本電信電話公社など諸機関の開発事業に係る埋蔵文化財につ
いて保存協議を行った。
3) 開発に伴う発掘調査
県教育委員会では(財)福島県文化センターに調査を委
託し、母畑事業区内の6遺跡の発掘調査を終了した。
調査面積は10.300m2である。
また、市町村区内の開発事業に伴う発掘調査は、そ
れぞれの市町村教育委員会が主体となって実施してい
る。現状では調査に必要な専門職員を採用している市
町村は少なく、調査に際して県教育委員会の専門職員
の派遣指導を要する例が多い。職員の派遣指導を行っ
た主な遺跡は次のとおりである。
烏崎一号墳(鹿島町)・沼ノ沢3号墳(双葉町)・
根古屋遺跡(霊山町)・成田前窯跡群(桑折町)・日向遺跡(飯館村)・
梁川城西三の丸跡(梁川町)・郡山台遺跡(二本松市)
・関畑遺跡(本宮町)・二塚遺跡(長沼町)・要害遺跡(須賀川市)・
古舘遺跡(矢吹町)・沢口遺跡(山都町)・上野尻遺跡(西会津町)
(3)史跡指定調査
1) 目 的
歴史上重要な遺跡の史跡指定を積極的に進めるた
めに、発掘調査を行い基本的資料を整備する。
2) 調査対象
関和久遺跡(白河郡家跡推定地)
西白河郡泉崎村大字関和久所在
3) 調査指導
坪井清足(奈良国立文化財研究所長)
伊東信雄(東北大学名誉教授)他
4) 調査期間
昭和56年10月20日〜12月5日
5) 調査結果(第10次)
8世紀代の倉庫跡と考えられる掘込地業を9世紀
の掘立柱建物が切っており、本年度調査地点は郡家
の中心である郡庁院である可能性が強い。また、北
辺の大溝が確定した結果、関和久遺跡は四至とも大
溝に囲まれており、東西約270m、南北約450mの長
方形であることが判明した。郡家跡で全範囲が確認
されたのは、日本で最初の例である。
6) 今後の対応
本年度内に土地所有者に国指定のための説明会を
開く。来年度中に同意を得て国の史跡指定の申請を
する。また、関和久遺跡に隣接する上町遺跡の性格
範囲等を明らかにする調査を開始する。
(4)埋蔵文化財保護体制充実のための研修
1) 第9回福島県埋蔵文化財発掘技術講習会
・8月3日〜8月13日 主 催 福島県教育委員会
後 援 飯舘村教育委員会
・会 場 飯舘村生活改善センター
・実 習 飯舘村大倉 日向遺跡発掘調
・参加人員 10名(市町村文化財担当者・教員等)
2) 奈良国立文化財研究所 埋蔵文化財センターにおけ
る埋蔵文化財発掘技術者研修
・遺跡保存整備課程専門研修 56年4月22日〜5月2
日
和深俊夫(いわき市教育文化事業団)
・埋蔵文化財発掘技術者一般研修 7月27日〜8月24
日
鈴木礼子(白河市教育委員会)
・集落遺跡課程専門研修 9月16日〜9月26日
山内幹夫(福島県文化センター 遺跡調査課)
・遺跡測量基礎課程専門研修 10月12日〜10月20日
山野憲雄(磐梯町教育委員会)
埋蔵文化財保護の普及活動
1) 発掘調査報告書等の刊行
ア 関和久遺跡 第10次発掘調査概要 5
イ 東北新幹線関連遺跡発掘調査報告書 4・5
ウ 母畑地区遺跡発掘調査報告書 8・4・5
エ 母畑地区遺跡分布調査報告書 6
オ 阿武隈地区遺跡分布調査報告(中部第二地区)(2)
力 矢吹地区遺跡分布調査報告(2)
2) 考古資料の貸出し
ア 鏡石町教育委員会へ 仏具壇遺跡・岡内林合遺
跡・ニタ通遺跡写真22葉
イ 二本松市.教育委員会へ 上原A遺跡・上原B遺
跡・田地ヶ岡遺跡遺物84点
ウ 鹿島町教育委員会へ 大窪横穴出土須恵器8点
エ 東北歴史資料館へ 谷地前C遺跡・平林遺跡出土
石器一括
(6)県内の発掘調査の状況
前年と比べ10件の増加となっているが、本年度も試掘
調査の件数が圧倒的に多く、全体の3分の2以上を占め
ている。開発に対応するんためのデーターの必要性から
多いのであるが、保存協議の結果9割程度が現状のまま、
あるいは工法変更によって保存されている。この結果が
発掘調査面積を抑え、また発掘調査費の拡大を抑制する
のに役立っている。
発掘調査の結果、本年度は墓料遺跡(会津若松市)・
根古屋遺跡(霊山町)など弥生時代の再葬墓や正直30号