教育年報1982年(S57)-167/316page
文 化
第1節 概 要
近年の社会・経済の急速な変貌の中で、人々は物質的な豊
かさとともに、精神的な豊かさを求めて自主的・創造的な文
化活動を活発化するとともに、地域の伝統や生活に根ざした
文化を再認識し、大切に継承、発展させていこうという気運
が高まっている。こうした要請に応えるため"伝統を生かし
創造性をはぐくむ文化活動の推進"をスローガンに「文化活
動の充実」、「文化活動指導者の確保」、「文化施設の整備」、
「文化伝承の充実」を施策の4本柱とし、県民の自主的な文・
化活動を活発にするための条件整備を積極的に推進したが、
その成果は次のとおりである。
1 文化活動の充実
(1)地域文化活動の促進
県芸術祭は、県南地区を中心に15の主催行事が実施され
た。また、参加行事は、県内一円で66行事が行われ、県民
芸術文化活動の促進に大きな成果を上げた。
文化のふるさと事業が、保原町他8町村で実施され、地
域の特性を生かした文化活動を促進した。
(2) 芸術鑑賞機会の充実
県選抜美術展など音楽、美術、演劇等の各種芸術鑑賞機
会の充実に努めた。
(3)文化活動発表機会の充実
県展、県文学賞の実施と文化振興基金の利用を通じて、
芸術文化活動発表機会の充実に努めた。
(4)文化振興基金の活用
県民の文化活動の活発化に伴い、文化振興基金の利用件
数は年々増加している。57年度は、総合部門を新設するな
ど助成対象事業の拡大を図った。
2 文化活動指導者の確保
芸術セミナーを文学、彫塑、工芸、演劇、合唱の5部門で
実施し、地域文化活動指導者の養成に努めた。
3 文化施設の整備
(1) 県立美術館、図書館建設の推進
昭和55年度より設置された文化施設整備室は、室員も室
長ほか17名となり、業務推進に努めた。
県立美術館収集評価委員会を3回開催し、作品の選定収集
集にあたった。
収集作品は、日本画10、国内洋画23、海外洋画6、国内
版画21、海外版画24、彫刻1、計85点にのぼった。
県立美術館、図書館の建設工事の業者が指名競争入札に
より決定され、本体工事について、美術館は、(株)鹿島建設仙
台支店、図書館は、(株)大林組仙台支店が施行することとなり
昭和57年7月11日着工された。
(2)県立博物館建設の推進
昭和56年度より委嘱した福島県立博物館収集展示委員に
よる収集展示委員会4回、展示委員会2回、計6回の会議
をもち、県立博物館展示設計の基本方針、総合展示室構成、
その他展示基本設計等の承認決定をみた。
また、建築、展示の基本設計も委託され、建築につい
ては(株)佐藤武夫設計事務所、展示については(株)トータル
・メデア開発研究所によりそれぞれ検討され3月末に成果
品として納品された。一方、博物館建設準備と並行して行
われている学術調査も2年目に入り調査事業として3事業
を行い貴重な資料も多数収集された。
(3)県文化センター施設・設備の整備及び事業の充実
県文化センターは、55年度、56年度の2ヵ年間に大ホー
ルの音響設備の整備に努めたあと、57年度から小ホールの
音響設備の整備に着手するなど施設・設備の整備に努めて
いる。
また、自主事業は、文化会館、美術博物館、歴史資料館
の3館において、ロートレック展はじめ18事業を実施する
など本県文化の振興に大きな成果を上げた。
4 文化の伝承の充実
(1)文化財保護体制の充実
各種開発事業の増加に対応し、(財)福島県文化センター
遺跡調査課の職員を増員し、埋蔵文化財の調査体制の強化
を図った。
また、指定文化財管理(文化財パトロール)の徹底を図
り、文化財の保護管理指導及び重要遺跡の保全管理に努め
た。
(2) 文化財指定の推進
文化財の保護を図るため、文化財基礎調査をはじめ、歴
史の道保存調査等を実施し、県内に所在する文化財の実態
を把握するとともに、新たに8件を県指定文化財に指定し
た。
(3)文化財保存の充実
指定文化財等の保存修理、防災施設及び埋蔵文化財の発
掘調査等の事業に対する助成を行うとともに、国・県営農
用地開発に伴う開発地内遺跡等の発掘調査及び記録保存を
図るなど、文化財の保存の充実に努めた。
(4) 文化財活用の促進
文化財に対する理解を深め、愛護思想の高揚を図るため、
昨年度に引続き県指定文化財に標柱等を設置した。
また、第32回県民俗芸能大会、第24回北海道・東北ブロ
ック民俗芸能大会、第3回県民謡まつりを開催した。一方、
文化財保護強調週間(11月1日〜7日)、文化財防火デー
(1月26日)を通じ文化財保護に対する啓蒙に努めた。
第2節 文化活動の促進
1 文化振興のための条件整備
(1) 文化行政の推進