教育年報1987年(S62)-121/225page

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 3 埋蔵文化財の保存の充実

(1) 埋蔵文化財調査体制

  県土の開発進展に伴い、開発側との事前協議が増加して

 おり、同時に遺跡の保護保存に対する県民の関心も高まっ

 ている。発掘調査体制も年々強化されており、(財)福島県

 文化センター遺跡調査課においては逐次定員増を図ってき

 た。本年度新たに3名増となり、現在採用職員25名(内嘱

 託8名)、県教委出向職員22名、計47名である。

 〔(財)福島県文化センター遺跡調査課職員数〕

年度 55 56 57 58 59 60 61 62
人員 20名 23名 26名 26名 30名 40名 44名 47名

(2) 開発事業地内遺跡の保護対策

  大規模開発事業地内の遺跡の保護は、(イ)遺跡の所在範囲、

 性格などを明らかにする(分布調査)。(ロ)工事等で遺跡が

 破壊されないように起業者と保護対策を協議する(事前協

 議)。(ハ)工事実施上止むを得ず遺跡の現状が失われる場合

 には、事前に発掘調査を行い記録として保存し、報告書を

 刊行する(発掘調査)という三段階がとられる。

 ア 分布調査

   開発地内の詳細分布調査を行い、遺跡の保存対策の資

  料とするもので表面調査と試掘調査に分けられる。表面

  調査は、東北横断自動車道10次区間90km(3,600ha)に

  ついて実施した。

   試掘調査は、国営母畑事業区内32遺跡、国営矢吹事

  業区内4遺跡について実施した。

 イ 開発関係機関との保存協議

   前年度からの継続協議を含め、次の諸機関と埋蔵文化

  財の取り扱いについて協議を行った。

   国営総合農地開発事業母畑地区・矢吹地区、

  会津農業水利事業会津南部地区、真野ダム地内、

  国道113号バイパス地内、相馬地域開発、

  東北横断自動車道及び県内各地の県営ほ場整備、

団体営ほ場整備などの関係諸機関。

 ウ 開発に伴う発掘調査

   県教育委員会では、開発事業に伴う発掘調査を

  (財)福島県文化センターに委託して、下記の遺跡につい

  て発掘調査を実施した。

   母畑地区内十三仏遺跡他7遺跡(5,000m2)、

  矢吹地区内平B遺跡他1遺跡(1,232m2)、

  会津農水内一ノ堰A・B遺跡(2,000m2)、

  真野ダム内羽白C遺跡他5遺跡(18,000m2)、

  国道113号バイパス地内善光寺遺跡他2遺跡(10,800m2)、

  相馬地域開発事業地内師山遺跡地11遺跡(66,320m2)、

  東北横断自動車道地内登戸遺跡他1遺跡(11,200m2)、合計114,552m2

   また、単一市町村内に係わる開発関連の発掘調査は、

  当該市町村教育委員会が主体者となって実施しているが、

  遺跡の重要性や調査体制を考慮し、必要と認めた場合、

  県教育委員会の専門職員を派遣し、指導している。

   主なものは、次のとおりである。

   仙台内遺跡・房ノ内遺跡・八幡塚古墳(福島市)、

  土井ノ内遺跡(桑折町)、田地ケ岡館跡(二本松市)、

 小浜城跡(岩代町)、上台遺跡(東和町)、台田遺跡

 (大玉村)、渡場遺跡(本宮町)、丸山遺跡・猫田C遺跡、

 大根畑遺跡、清水台遺跡(郡山市)、うまや遺跡・要害

 遺跡(須賀川市)、西方館跡(三春町)、植木A遺跡

 (大越町)、南古館跡(長沼町)、岡谷地A遺跡(天栄村)、

 牛窪遺跡(西郷村)、小峯城跡(白河市)、川原町口遺跡

 ・根岸遺跡(会津若松市)、廻谷地遺跡(猪苗代町)、

 男壇遺跡(会津坂下町)、石生前遺跡(柳津町)、

 十五壇遺跡(会津高田町)、荒屋敷遺跡(三島町)、

 野馬土手跡(原町市)、鹿屋敷遺跡(浪江町)、下平石遺跡・

 中山遺跡(いわき市)

(3) 史跡指定調査

1) 目  的

  歴史上重要な遺跡の史跡指定を積極的に進めるために

 発掘調査を行い、基本資料を整備する。

2) 調査対象

  関和久上町遺跡(西白河郡泉崎村大字関和久所在)

3) 調査指導委員

  岡田茂弘(国立歴史民俗博物館教授)、桑原滋郎

 (宮城県多賀城跡調査研究所長)、梅宮茂(福島県文化財

 保護審議会委員)、渡邊一雄(いわき市三相中学校教頭)

4) 調査期間

  第二次5ケ年計画の1年次目(通算第6次)の調査と

 して高福寺跡地点の調査を実施した。その結果第5次調

 査区の東側にも奈良〜平安時代にかけての官衙風建物跡

 などが検出された。その在り方からして、古代白河郡衙

 の都庁もしくは白河軍団跡の中心的部分である可能性が

 ますます高くなった。

(4) 埋蔵文化財保護体制充実のための研修

1) 第15回福島県埋蔵文化財発掘技術者講習会

 ○期間 昭和62年8月18日〜8月22日

 ○会場 (財)福島県文化センター・福島市房ノ内遺跡

 ○人員 23名

 ○内容 調査計画と方法、福島県の縄文文化・弥生文化

     ・近世の考古学・官衙遺跡・旧石器文化、石器

     と土器の実測、実習(福島市房ノ内遺跡発掘調

     査)

2) 奈良国立文化財研究所埋蔵文化財センター主催埋蔵文

 化財発掘技術者専門研修

 ○遺構探査・予備調査課程 62年5月19日〜6月9日

   石田明夫       会津若松市教育委員会

 ○報告書作成課程     6月24日〜6月26日

   猪狩忠雄      (財)いわき市教育文化事業団

 ○一般課程        7月2日〜8月5日

   西谷勉       新地町教育委員会

   寺内勝宣       福島市教育委員会

 ○遺跡保存整備課程    8月18日〜9月5日

   廣岡敏      (財)いわき市教育文化事業団

   石井宏幸      (財)福島市振興公社

 ○遺跡測量課程      9月14日〜10月6日

   原充広      (財)福島市振興公社

 ○弥生時代遺跡調査課程  10月21日〜11月10日



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