教育年報1988年(S63)-182/237page

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第3節 教育研究

 1 学校の経営過程における現職教育のあり

方に関する研究

 学校経営部 (第2年次)

 本年度は、昨年の予備調査結果から現在県下各校の校内研

修推進で最も改善充実が必要と思われる11の課題を確定し、

その解決改善を図ることを目的とした「自己啓発を促す校内

研修のあり方・すすめ方」の試案づくりをした。

 作成した試案内容は次のとおりである。

<校内研修推進計画の段階から>

 1) 個人のニーズを生かした研修課題の集約のしかた。

 2) 研修課題を生かした研究主題設定のしかた。

 3) 研修意欲を促す研修組織のあり方・すすめ方。

 4) 到達目標達成までの過程が明確な年間推進計画のつくり方。

<校内研修実施の段階から>

 5) 研修の成果をあげる研修時間の確保と運営のあり方・すす

め方。

 6) 研修意欲を高め、授業の質的改善を図る授業研究のあり方

・すすめ方。

 7) 研究主題到達までの資料の収集・活用のあり方・すすめ方。

 8) 協働意欲を高めるリーダーの援助指導のあり方・すすめ方。

<校内研修評価の段階から〉

 9) 研究推進における形成的評価のあり方・すすめ方。

 10) 研究推進の各段階における総括的評価のあり方・すすめ方。

 11) 次年度に生かす評価結果活用のあり方・すすめ方。

 なお、次年度は、研究協力校の実践を通して修正し、「校

内研修ハンドブック」としてまとめる予定である。

 2 基礎・基本の定着と個性の伸長に関する

研究

学習指導部 (第2年次)

 本研究は、学習指導の改善の視点から、児童生徒の個性重

視の原則に立ち、基礎的・基本的な内容を身につけさせる過

程を通して、更にそれを基盤としながら、一人一人の個性を

生かし、伸ばす学習指導の在り方を追究するものである。

 本年度は、前年度の実態調査を踏まえ、「基礎・基本」と

「個性」について定義すると共に、全体仮説を設定した。そ

の全体仮説を受けて教科ごとの仮説を設定し、小学校では国

語科・社会科を、中学校では数学科を対象に研究協力校にお

いて、単元を通して実践研究を進めた。実践に当たっては、

基礎的・基本的な内容と個性を切り離すことなく、それぞれ

を有機的に関連させながら、基礎的・基本的な内容を定着し、

個性を伸長させるように学習活動を展開した。

 その結果、お互いの「よさ」を見つけ認め合うことの繰り

返しの中から、児童生徒一人一人が学ぶことに喜びを見いだ

すことができ、学力の向上が見られたばかりでなく、グルー

プひいては学級全体が今までになく互いに協力しあう雰囲気

も出てきた。

 今後は、基礎的・基本的な内容を定着させ、「よさ」を生

かすための手だてをさらに具体化し、その手だてが適切に作

用しているかどうかを確かめる方法についていっそう工夫し

ながら主題を追究する。

 3 情報活用能力の育成に関する研究

科学技術教育部 (第1年次)

高度情報社会の中で、児童・生徒が主体的に情報を選択し

活用する能力を育成する方策の追究を目指して研究に着手し

た。第1年次は、まず情報活用に関する基礎調査を実施し、

地域・学年・校種別に児童・生徒をとりまく情報の種類や利

用状況を調べ、その結果を基に情報活用能力育成プロセス

(モデル)を作成した。これは、問題の発見から解決・評価

までの過程を情報活用という観点から構造化したもので、こ

のプロセスを踏まえながら更に検証授業 (中学校2年学級指

導)を試行・実践した。以下に、主な研究の成果をまとめる。

 1) 情報活用能力の育成状況を測定するため、12項目から成

る評定尺度1 (教師の観察評価)と子どもの情意的側面を

含めた変容を客観的に評価する評定尺度2 (子どもの自己

評価)とについて、評価の有効性が確認できた。

 2) 情報手段との関連を密接にした情報活用能力育成プロセ

スの学習過程は、指導計画を作成するための重要な指標に

なるものである。

 3) 授業では経験のない生徒がパソコンの使用に極めて好感

を示したが、更に機器導入の仕方を検討すべきである。

4 事例を通した教育相談の進め方に関する

研究 一予防的な指導援助一

教育相談部 (第1年次)

 この研究のねらいは、教育相談において、より的確で効果

的な「予防的な指導援助のあり方」を確立することである。

 そのために、予防的な指導援助のとらえ方を明確にし、教

育現場に調査と事例の収集を行った。調査と収集した事例並

びに当教育相談部での相談事例を基に、予防的な指導援助の

要点と基本的な対応を帰納的に追求した。また、以上により

集約した要点と基本的な対応が、予防的な指導援助に効果的

であることを理論的に説明した。

 一連の研究を通して、以下のことを明らかにした。

 (1) 予防的な指導援助とは、問題行動を起こすことが予測さ

れると診断された児童生徒、または、現在の行為や行動が

問題行動に向かって増幅されつつあると診断された児童生

徒に対して、問題行動につながる素因や誘因を改善、解決

または除去することである。

 また、すべての児童生徒に対して問題行動を起こさない

ための意識づけを図り、問題行動の発生を予防する指導援

助である。

 (2) 予防的な指導援助の主な要点としての内容は、問題行動

を未然に防ごうとする指導援助者の姿勢を基盤として、子

供の理解を積極的に図り、問題行動の内容の理解を基に子

供のさ細な問題点に気づくことである。その上で、資料収

集、予測診断、予防仮説を段階的に踏まえ、子供や家庭と

の密接なラポール形成を図ると共に学級、学校の環境を整



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