教育年報1996年(H8)-203/254page

[検索] [目次] [PDF] [前][次]


れる教材・教具であれば、集中して主体的に学習に取り組

み、学習への興味も喚起できるものと考えた。さらに、正

誤の結果がB男に分かりやすいように、視覚的な手がかり

を加えることによって、より学習の成果が期待できると考

え、「マッチングカード」を作製した。これらのB男の授

業の様子から「教師用の正誤のスイッチの増設」、

「挟み込み式課題シートの作製」の二つの改良を行い、活用範囲

が広がった。

(3) 全身的な運動機能障害のあるC子のコミュニケー

ション手段として音声付きスイッチ「せんせい」を

作製し活用した事例(肢体不自由教育)

 「今、この時、この場面」で、「誰かに何かを伝えたい」

「話したい」というC子の願いを実現させるための教材・

教具として音声付きスイッチを作製し、活用した。装置の

操作にも慣れ、トイレの合図については、完全に音声付き

スイッチ「せんせい」で行っている。

(4) 音声スイッチ「ゆうぞうくん」を作製し、D男の

行動変容を図った事例(精神薄弱教育)

 周りの子供たちとのコミュニケーション関係の円滑な成

立を促すための教材・教具があれば、将来のD男のコミュ

ニケーション関係の広がりにもつながると考え、音声スイッ

チを作製した。

 朝、教室に「ゆうぞうくん」を持って挨拶に来ると、子

供たちは、D男の周りに集まって、「ゆうぞうくん」を使っ

て挨拶するのを待っているという姿が見られるようになっ

た。

(5) 重複障害のあるE子の自発性を高めるためのスイッ

チ「おせばな一る」を作製し、活用した事例(精神

薄弱教育)

 E子が「音楽を聴く」ということを自発的に行うことが

できるような教材・教具を工夫し、作製した。一人で手を

動かし、手がスイッチに触れて音が出たときには、声を出

して笑い、頭上で手をたたきながら音楽を聴いていた。

2 養護教育におけるコンピュータ活用に

関する研究

一子どもの実態に応じた入力装置の工夫と作製一

研究の趣旨

 肢体不自由児の生活支援、コミュニケーション支援、

代行、補助等を目的としたコンピュータ活用に関する研

究として周辺機器の工夫と開発に関する研究を進めた。

 F男は、四肢機能障害により全身的に運動機能障害があ

り、上肢及び下肢の意図的な調整が困難である。手足の緊

張が強く、両手には、常にタオルを持っている状態で生活

しており、手足を使用しての書写、作業等は、困難である

が、言葉によるコミュニケーションが可能である。しかし、

F男の今後の生活のことも考え、文字によるコミュニケー

ションを可能にし、将来は手紙や文章などが書けるように

するためのコンピュータ入力装置の段階的な工夫と作製を

中心としたコンピュータ活用について検討した。コンピュー

タ入力装置は、音声(舌打ち)センサーを活用し、F男の

音声や舌打ちに反応し、コンピュータヘの入力が行われる

装置を作製した。F男のコンピュータ活用は、自分からや

ろうとする意欲や主体的、自主的な行動につながり、毎日

の間接的、依存的な生活の中でいくらかでも充実感を味わ

う機会となった。

3 教育相談に関する研究

一学校との連携を大切にした教育相談のあり方一

研究の趣旨

 相談事例を通しながら、学校との適切な連携を基盤と

した教育相談に関する研究を進めた。

 近年、小・中学校においては、障害のある児童生徒が通

常の学級に在籍して学習する姿が見られるようになり、そ

に伴って、児童生徒はもとより担任や保護者が不安や悩み

を抱えるなど様々な問題が生じている。したがって、相談

機関は、教育相談をとおして、一人一人の特性に即した教

育的なかかわり方について、多面的に支援していくことが

大切であり、そのためにも学校との連携が重要になってく

る。

 対象児G男の良さを生かし、できないことをカバー(失

敗を予防する)しながら、できるところがら取り組むこと

を基本とし、G男の生活の中での具体的な支援の方法を話

し合うことで学校及び家庭との連携を進めることにした。

その結果、G男の「理解できる学び方」及び「段階的な援

助」について学校と家庭で支援することが最も大切である

ことが明確になった。

4 個人研究

(1) 長期研究員による研究

1) 「学校で話さない子供の自己表現力を高める援助のあ

り方 一援助プログラムを活用した学校でのかかわり

をとおして一」

福島県養護教育センター長期研究員  猪狩和雄

2) 「聴覚障害児の国語力を高めるための指導の在り方に

関する研究 一国語科の意識調査と発表活動の分析を

通しての考察一」

福島県養護教育センター長期研究員  櫛田省吾

3) 「学習上特別な配慮が必要な子供(学習障害児等)に

対するかかわり方に関する研究 一落ち着きがない子

供たちへの相談事例をとおして一」

福島県養護教育センター長期研究員  柳内泰二

(2) 実践研究

1) 「生徒が主体的に取り組み、学ぶ喜びを実感できる数

学科の授業のあり方 一単元設定と導入の工夫をとお

して一」

福島県立須賀川養護学校教諭     星ひろ子


[検索] [目次] [PDF] [前][次]

Copyright (C) 2000-2001 Fukushima Prefectural Board of Education All rights reserved.
掲載情報の著作権は福島県教育委員会に帰属します。