教育年報1997年(H9)-203/258page
第14章 福島県養護教育センター
第1節 概要
福島県養護教育センターは、地方教育行政の組織及び運営
に関する法律(昭和31年法律第162号)第30条及び地方自治
法(昭和22年法律67号)第244条第1項の規定に基づき、障
害児の教育(以下「養護教育」という。)の振興及び充実を
図るために設置された教育機関である。昭和61年4月1日に
開所し、以来関係機関と連絡協調しながら、障害児に関する
教育相談、教職員の研修、調査・研究、図書・資料の収集・
提供、広報・啓発等の事業を行ってきた。
また、平成9年度より組織規則改正による係制の廃止、主
任指導主事の配置が行われ、さらに事業体系・組織において
も、相談・啓発担当として教育相談系と啓発・連携系、研修・
研究担当として研修・開発系と研究・情報系へと組織機構が
再編成された。
1 教育相談事業
教育相談事業は障害児、またはその疑いのある就学前乳幼
児、児童生徒について、障害の種類や程度に応じた養育、教
育、就学及び進路等について適切な措置がとられるよう、保
護者や学校、幼稚園、保育所、市町村教育委員会からの相談
に対応し、必要に応じて嘱託医や専門機関と連携し検査・観
察・診断を行い、専門的かつ総合的観点から教育相談を推進
してきた。
本年度は、特に重点として、教育相談、就学相談の適正か
つ有効な取り組みを継続的に実施するとともに、早期教育相
談の体制作りに取り組んだ。特に当センター所管の相談事業
の相談員、児童相談所心理判定員、各教育事務所担当指導主
事等からなる、早期教育相談連絡調整会議を初めて開催し、
情報交換や相談員としての資質の向上を図る研修に努めた。
また、ミニコミ誌「ふれあいめえる」の配付等を通して、
教育相談事業について県民への周知に努めた。
本年度の教育相談の受理件数は、昨年度比で109%、延件
数では108%となり、相談件数が増加している。障害種別に
よる相談件数の内訳では、精神薄弱と情緒障害(特に不登校
と学習障害等)についての相談が多い。
2 教職員研修事業
本県の養護教育担当教職員を主な対象として、障害児を取
り巻く社会の変化や多様な教育ニーズをふまえ、当センター
が行っている組織的研究や教育相談等の成果を生かした基礎
的・基本的な知識及び技能の習得に関する研修や養護教育に
関する専門的知識・技能、一般教養についての研修を実施し
てきた。
新たな視点から16研修講座に構築した専門研修、経験者研
修1、2、3、初任者研修等の基本研修において、教員の資
質、指導力、専門性のさらなる向上をめざした研修事業を推
進した。
専門研修講座の総受講者は254名であり、基本研修の総受
講者は234名(経験者研修80名、初任者研修47名、その他の
研修107名)であった。また、研修の機会を広く多くの教職
員に提供するため実施した公開講座(4講座)の聴講者総数
は、69名であった。
3 教育調査・研究事業
養護教育センターに課せられた研究機関としての役割と使
命を達成するため、本県が当面している養護教育振興上の課
題及び学校における教育実践上の具体的課題と関連するもの
として、次の調査・研究を行った。
プロジェクト研究1は、「特殊教育における個別教育プロ
グラムに関する研究」をテーマとして、本年度初めて取り組
んだ研究であった。本年度は、その1年次であり、「個別指
導計画の作成に関する現状と課題」として、県内の盲・聾・
養護学校にアンケートを依頼し、個別指導計画に関する実態
調査及び分析等の研究を行った。
プロジェクト研究2は、「コンピュータ教育支援研究」と
して「個別的・障害別の子供の実態に応じた入力装置の工夫
と活用に関する研究」に取り組んできた。本研究では、肢体
不自由児の生活支援、コミュニケーション支援、代行・補助
手段としてのコンピュータ活用の可能性を探り、「プッシュマウス」
を作製して、肢体不自由教育におけるコンピュータ
教育の可能性を探った。
プロジェクト研究3の「教育相談に関する研究」では、
「学校との連携を基盤にした教育相談の在り方に関する研究」
として、当センターの機能を十分に生かした教育相談を進め
ながら、「不登校児に対する心理特性を生かした支援の在り
方」についての研究を行った。
これらの研究の成果は、研修講座や教育相談の内容に反映
させるとともに、研究紀要第12号として刊行し、併せて第12
回当センター研究発表会において発表した。
4 教育図書・資料の収集・提供事業
本県養護教育の中心的施設としての機能の充実をめざして
広く養護教育関係図書・資料の収集に努め、関係教職員等が
活用できるよう、整備、充実を図ってきた。
本年度は、特に養護教育に関する図書及び教育資料の収集・
とコンピュータによる検索機能を充実させた。
なお、3月末日現在で養護教育関係図書の蔵書数6,501冊、
逐次刊行誌数30種、指導資料数1,863点である。
5 広報・啓発事業
養護教育センターの事業内容及び調査・研究の成果を紹介
し、その普及を図るとともに学校及び社会の養護教育に対す
る理解と認識を深め、併せて人間性を重視した学校教育を推
進するための広報活動を行ってきた。
主な事業としては、「所報養護教育」43、44、45号の発
行と「研究紀要」第12号、障害児ハンドブック「心のケアが