教育年報1998年(H10)-001/270page
第1章 教育行政の概観
平成10年度は、中央教育審議会答申をはじめとする各種答
申が相次いで出され、また、全校種にわたる新しい学習指導
要領が公示される等、21世紀に向けた教育改革の大きなうね
りの中にあったといえる。
県教育委員会は、これら国の文教施策や県政の方向及び社
会のニーズ等に配慮し、県民の期待に応え得る教育行政の推
進に努めた。この間、平成10年10月19日付けで、福島県教育
委員会委員長には小口潔子氏が互選され、委員長職務代理者
には大和郭二委員が選任された。
県教育行政において特記すべき事項としては、次の点を挙
げることができる。
第一は、本県の未来を担う子どもたちの豊かな人間性をは
ぐくみ、「生きる力」の土台を築くために、学校のみならず
家庭・学校・地域社会を挙げて総合的に「心の教育」に取り
組んだことである。具体的には、いじめや登校拒否等の学校
不適応問題への対応を図る「ハートウォームプラン」、子ど
もの発達段階に応じた家庭教育について親自身が学ぶことの
できる学習環境づくりを推進する「家庭再発見推進事業」、
地域における「心の教育」の充実を図る地域教育力向上推進
プラン(地域における「心の教育」専門家会議と子ども広聴
会)等の事業からなるすこやかハーモニー「心の教育」総合
推進事業として取り組んだ。
第二は、新世紀の本県を担う人材を育成する観点に立ち、
本県高校教育の一層の充実を図るため、「県立高等学校教育
改革第一次まとめ」(平成9年6月公表)に基づき、平成15
年度を目途とする「県立高等学校の男女共学化実施年次計画」
を平成10年7月に公表するとともに、学校規模の適正化、学
校・学科の適性配置等に関して平成19年度を目途とする「県
立高等学校教育改革第二次まとめ」を策定し平成11年3月に
公表したこと。また、生徒一人一人が豊かな個性に応じて、
学校・学科を選択することが可能となるようにその改編等を
進めてきているが、今年度は、新たに小野高校を総合学科に
転換し、小高商業高校等において学科を改編したこと。さら
に、男女共学化については、郡山東(前郡山女子)高校及び
郡山高校(普通科)において行ったこと。
また、盲・聾・養護学校児童生徒の障害の重度・重複化、
多様化等にともない、教育内容・方法の在り方、施設・設備
の整備等の新たな対応が求められているため、平成8年4月
より県立学校改革推進事業として盲・聾・養護学校教育改善
調査研究事業を実施し、平成11年3月、「本県における養護
教育の在り方」として改善・充実のための基本的構想を報告
書(素案)としてまとめたこと。
第四は、県民のスポーツヘの関心が高まりを見せる中で、
一定地域を母体としてジュニア層(中・高校生)を対象に強
化合宿や研修会を開催し、一貫した指導体制の構築を目指し
た地域における強化拠点整備事業等を含めた競技スポーツの
振興とともに、地域のスポーツ施設を拠点とする総合型地域
スポーツクラブを育成するなど、誰でもが目的に応じて気軽
にスポーツに親しみ、「スポーツある人生」として健康で明
るい生活が送れるよう、生涯スポーツのより一層の推進を図っ
たこと。
以上のほか、教育行政の主要な動きは次のとおりである。
1 生涯学習関係
(1) 副知事を本部長とする生涯学習推進本部を中心に、全庁
的な生涯学習の推進に努めるとともに、生涯学習関連事業
において特に他部局などとの連携を必要とする事業を「連
携強化推進事業」として選定し、広報に努めた。
(2) 県民の学習需要に対応した学校開放講座など県民講座を
開催し、学習機会の充実に努めた。
(3) ボランティア活動を生涯学習の観点からとらえて推進事
業を展開し、特に必要性の高まっているボランティアコー
ディネーターの養成に取り組んだ。
(4) 生涯学習推進のため、広報誌の発行をはじめとする、普
及啓発活動を行った。
(5) 学習情報提供の充実のため、「ふくしまマナビィネット」
の普及と利用拡大に努めた。
(6) 子どもたちの豊かな人間形成を図るため、「ふくしま・
フレッシュ・ふれあいデー」(毎月第2土曜日)の啓発に
努めた。
2 義務教育関係
(1) 県内の小・中学校児童生徒の基礎学力の向上を図るため、
「学力向上IDプラン」事業を実施した。その中で、平成
6年度から実施してきた基礎学力向上推進事業の成果を全
小・中学校に普及させるとともに、個に応じた指導の充実
を図るためのT・T(ティーム・ティーチング)教員を配
置するなど、各市町村教育委員会における学力向上推進事
業への支援を通して、各小・中学校における日々の授業の
工夫改善を図り、基礎学力の向上に努めた。
(2) 総合的な生徒指導施策「ハートウォームプラン」の一環
として、各教育事務所に学校教育相談員を配置し、電話相
談や学校等への訪問相談活動を実施した。また、15校の中
学校に県単独事業によるスクールカウンセラーを配置し、
いじめ問題や不登校等の学校不適応問題への指導援助の強
化を図った。さらに、カウンセリング研修会や教育相談専
門員研修会、各種連絡協議会を開催し、教職員や教育相談
専門員の資質の向上と関係機関相互の連携強化を図った。
(3) 環境教育推進モデル校を小学校2校、中学校1校を指定
し、環境教育の在り方の研究を進めるとともに、福島、群
馬、新潟三県の児童生徒による「尾瀬子どもサミット」を
実施し、次世代を担う子どもの新しい自然観の育成に努め
た。
3 高等学校教育関係
(1) 「学力向上サクセスプラン事業」を全日制のすべての学
校を対象として1)学習の個別化を図るためのT・T教員の
配置・2)各高校の生徒の実態に応じた進路実現のための事