教育年報1998年(H10)-209/270page
第15章 福島県養護教育センター
第1節 概要
福島県養護教育センターは、地方教育行政の組織及び運営
に関する法律(昭和31年法律第162号)第30条及び地方自治
法(昭和22年法律第67号)第244条第1項の規定に基づき、
障害児の教育(以下「養護教育」という。)の振興及び充実
を図るために、昭和61年4月1日に郡山市富田町に開所され
た。
開所以来、関係機関と連絡協調しながら、教育相談、教職
員の研修、調査・研究、図書・資料の収集・提供、広報・啓
発等の事業を行ってきた。
近年の障害の重度・重複化、多様化、早期からの教育的支
援の必要性、情報化社会の進行、ノーマライゼーションの理
念の浸透等に伴い、養護教育センターではニーズに応じた事
業の推進に努めてきた。
1 教育相談事業
障害児、またはその疑いのある乳幼児、児童生徒について、
障害の種類や程度に応じた養育、教育、就学及び進路等につ
いて適切な措置がとられるよう、教育相談を行った。保護者
(本人)や学校、幼稚園、保育所、市町村教育委員会からの
相談に対応し、必要に応じて嘱託医や専門機関と連携し検査・
観察・診断を行い、専門的かつ総合的観点から教育相談を推
進してきた。
本年度は、特に重点として、教育相談、就学相談の適正か
つ有効な取り組みを継続的に実施するとともに、早期教育相
談の体制作りに取り組んだ。当センター所管の相談事業の相
談員、児童相談所心理判定員、各教育事務所養護教育担当指
導主事、保健所の保健婦等からなる、早期教育相談連絡調整
会議を年2回開催し、連携の強化、情報交換や相談員として
の資質の向上を図った。
また、ミニコミ誌「ふれあいネット」の配付等を通して、
教育相談事業について県民への周知に努めた。
本年度の教育相談の受理件数は799件で、昨年度比113%、
延件数では109%となり、相談件数が増加している。障害種
別による相談件数の内訳では、精神薄弱と情緒障害(特に不
登校と学習障害等)についての相談が多かった。
2 教職員研修事業
本県の養護教育担当教職員を主な対象として、障害児を取
り巻く社会の変化や多様な教育ニーズを踏まえ、当センター
が行っている組織的研究や教育相談等の成果を生かした基礎
的・基本的な知識及び技能の習得に関する研修や養護教育に
関する専門的知識・技能、一般教養についての研修を実施し
た。
15の専門研修講座、初任者研修・経験者研修等の基本研修
において、教員の資質、指導力、専門性のさらなる向上をめ
ざした研修事業を推進した。
専門研修講座の総受講者は284名であり、基本研修の総受
講者は200名(経験者研修71名、初任者研修24名、その他の
研修105名)であった。また、研修の機会を広く多くの教職
員に提供するため実施した公開講座(4講座)の聴講者総数
は117名であった。
3 教育調査・研究事業
養護教育センターに課せられた研究機関としての役割と使
命を達成するため、本県が当面している養護教育振興上の課
題及び学校における教育実践上の具体的課題として、次の調
査・研究等を行った。
プロジェクト研究1「早期教育相談システムの在り方に関
する研究」は、子供の特性や保護者の心情に沿った早期の教
育相談を地域に密着した形で実施していく方法、さらに子供
と保護者を支援していくための連携の在り方等について明ら
かにしたいと考え、研究を行った。
プロジェクト研究2「養護教育における個別の指導計画に
関する研究」は、個に応じた指導をよりきめ細かく実施して
いくために、昨年度から継続して研究を行っているものであ
る。二年次の本年度は「個別の指導計画」の内容を、書式や
作成システムモデルの作成過程を通して明らかにする研究を
行った。
プロジェクト研究3「コンピュータ教育支援研究」は、知
的障害児が生活に必要な情報をもとに、自己選択、自己決定
していく過程において、媒体としてコンピュータがどのよう
に活用できるのかを実践的に研究した。
これらの研究の成果は、研修講座や教育相談の内容に反映
させるとともに、研究紀要第13号として刊行し、併せて第13
回研究発表会において発表した。
4 教育図書・資料の収集・提供事業
本県養護教育の中心的施設としての機能の充実をめざして
広く養護教育関係図書・資料の収集に努め、関係教職員等が
活用できるよう、整備、充実を図った。
本年度は、特に養護教育に関する図書及び教育資料の収集、
コンピュータによる簡易検索機能の充実、養護教育に関する
ビデオコーナーの設置を推進した。
なお、3月末日現在での養護教育関係図書の蔵書数は6,665
冊、逐次刊行物30種、教育資料数2,210点である。
5 広報・啓発事業
養護教育に関する情報や資料及び当センターの事業内容の
紹介を定期刊行の広報誌や各種発行物として、教職員や関係
諸機関等に配付し、養護教育に対する啓もう・啓発の推進を
図った。
主な事業としては、「所報養護教育46、47、48号」の
発行と「研究紀要第13号」、「障害児ハンドブック『心のケアが必要な子へのサポートガイド2一かかわり方Q&A―』」、
ミニコミ誌「ふれあいネット」及び巡回就学相談ポスター・