レッドデータブックふくしまU 淡水魚類/両生類・爬虫類/哺乳類 - 016/122page

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1 淡水魚類の概要

福島県には、県の中央を貫流し宮城県から太平洋に注ぐ阿武隈川と会津盆地を流下して日本海へ注ぐ阿賀川の二大河川があり、県南地方では久慈川が茨城県に流下する。

また浜通りでは、木戸川や鮫川などの十数河川が阿武隈山地から太平洋へ注いでいる。更に内陸部には猪苗代湖、沼沢湖などの天然湖、田子倉、日中ダム湖に代表される発電、かんがい用の人工湖とともに大小2,000余りのため池が全域に点在し豊かで多様な水環境を構成している。

今回の調査では、これらの変化に富む水域に適応して生息する淡水魚類について、全県的な分布の実態を明らかにすることができた。

現地調査及び文献調査等で確かめられた淡水魚類は20科76種であるが、種類数や生息域は今後の調査でさらに増えるものと考えられる。確認魚種のうちレッドリストに記載する20種の分布には特徴が見られ、本県の地理的な変化等に対応するものであった。

全県に広く分布するのはスナヤツメ、メダカ、ホトケドジョウ、ギバチ及びカジカ(大卵型)の5種類である。これらが本県の全域に分布するのは、湧水や伏流水の流れる砂礫底質で水草が繁茂する河辺や湖岸など豊かな自然に恵まれていることの証しでもある。しかし、水田の用排水路は改修されて配水管による給水施設に変わり、メダカなどの里の水辺にみられていた魚たちは基盤整備の行われない山村の水路や小型のため池などで細々と生命をつないでいる現状もある。

会津地方にはウケクチウグイをはじめ、アカヒレタビラ、ヤリタナゴ、イトヨ(陸封型)が分布する。ウケクチウグイは東北地方でも日本海へ注ぐ限られた河川に分布する希少な種であるが、生息生態の詳細については未解明の部分が多い。また、会津盆地などに生息する陸封型のイトヨは、国のレッドリストの「絶滅のおそれのある地域個体群」にも指定されている。

浜通りには、カワヤツメ、タナゴ、ゼニタナゴ、ボウズハゼ、ジュズカケハゼ、シラウオやシロウオが分布する。これらの中には汽水域を利用し生息している種も含まれる。

エゾウグイとアカザは会津地方と浜通りに分布しており、エゾウグイは本邦における太平洋側の南限種と考えられる。またアカザは会津地方のみの生息と考えられていたが、浜通りの1河川でも確認された。また、キンブナは中通りと浜通りで確認されており、シナイモツゴも一部の沼で確認された。今後更に対象水域を拡大し詳細な調査を実施すれば分布域が広がることも期待できる。

レッドリスト掲載魚種以外では、漁業権魚種であるワカサギ、ヤマメ、イワナ類、ヒメマス、ニジマス、アユ、コイ、フナ類、ウグイおよびウナギの10種は種苗放流が行われている。ヒメマス
は本県では沼沢湖にのみ生息する。1915年に十和田湖から移植され定着した漁業上貴重な種である。

天然記念物に指定されている魚類の生息地は、阿賀川水系只見川のウグイの生息地「魚渕」、いわき市内のウナギの生息地「賢沼(カシコヌマ)」がともに国の指定であり、北会津村のイトヨの生息地「白山沼」は県の指定となっている。また、北会津村のイトヨの生息する「無頭沼(カシラナシヌマ)」、会津坂下町に生息するイトヨと喜多方市押切川公園内に生息するイトヨは市町村指定である。

猪苗代湖のように広大な湖をはじめ小川やため池などの様々な水域に生息する魚類は、いくつかの種が共存して安定した生態系を維持しながら繁殖している。レッドリスト掲載種を含む多くの魚種は、こうした安定した環境のもとで繁殖し遺伝子を継代しているが、生息している水域が消滅したり外来魚などとの競合が起こり、生息域が限定されてきている種も見られる。特に、外来魚の意図的な放流は、地域の生態系に大きな被害を与えていることから、県ではオオクチバスやコクチバスおよびブルーギルについて罰則を伴う規則を設けて移植を禁止しており、これらの釣獲魚は再放
流しないよう指導している。また、関係漁業協同組合では駆除を実施している。


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