レッドデータブックふくしまU 淡水魚類/両生類・爬虫類/哺乳類 -069/122page
を取り入れた先進的な取り組みも行われ始めている。
しかしながら、県内に生息・生育する野生生物の実態については、本県において自然科学系の組織的な研究体制が整っていないことなどから、これまで十分な学術調査等が行われてこなかったのが実情である。このため、その現状を把握し、適切な保護対策の基礎資料とすることを目的としたレッドデータブック策定事業が、平成10年度より実施されている。平成14年3月には『レッドデータブックふくしまT』がとりまとめられ、絶滅のおそれのある野生生物種965種が選定された。さらに、平成15年1月には淡水魚類、両生・爬虫類、哺乳類を対象に59種が選定された「ふくしまレッドリスト」が公表され、『レッドデータブックふくしまU』も本年度中に完成する予定となっている。
※植物、昆虫類、鳥類についてのレッドリストは参考資料1参照
表−1 ふくしまレッドリスト選定種総括
カテゴリー\分類群 植物 動物 合計 コケ植物 シダ植物 種子植物 小計 昆虫類 鳥類 淡水魚類 両生・爬虫類 哺乳類 小計 絶滅 −2
5 7 1 - - - 2 3 10 絶滅危惧 絶滅危惧T類 26 7 97 130 8 11 3 - 1 23 153 絶滅危惧U類 24 18 138 180 16 14 2 1 1 34 214 準絶滅危惧 18 8 114 140 30 17 6 4 1 58 198 希少 33 29 106 168 38 23 2 5 8 76 244 注意 - - 8 8 7 1 - - 3 11 19 未評価 15 9 124 148 12 6 7 5 8 38 186 合計 116 73 592 781 112 72 20 15 24 243 1,024『レッドデータブックふくしまT』では、生息・生育数減少の主な要因として、森林伐採や土地造成等による生息地の破壊や分断化、過剰な採取圧、移入種による捕食等、様々な問題をあげている。遺伝子レベルでも移入種との交雑により、地域固有の遺伝子組成が失われる遺伝子汚染等が懸念されるなど、野生生物を取り巻く環境に急激な変化がみられる。
(ア)植物
本県に生育している植物は、種の数も多く、生育環境も多様であることから、生育数の減少要因も多岐にわたっている。『レッドデータブックふくしまT』を基にした要因分析によれば、最大の要因は、開発行為による生育環境の直接的な改変であるが、ラン科の植物に代表される過剰な採取圧も大きな要因となっている。採取圧による減少は、高山性の植物のように特殊な環境に生育する植物のみならず、エビネやコアツモリソウなどの野生ランにも多く見られ、既存の採取規制などがない身近な雑木林で多くの植物が過剰な採取圧にさらされている状況にある。
また、植物については、山地の日陰の石灰岩上のみに生育するサンカクキヌシッポゴケなど、特殊な環境のもとで生育する種や、ナンブソウなど産地が極めて限定されている種があり、このような種の生育には、特有の環境条件を必要とし、生育基盤が極めて脆弱であることから、絶滅の危険性を回避するためには生育地全体を保全する必要がある。