レッドデータブックふくしまU 淡水魚類/両生類・爬虫類/哺乳類 -082/122page
4 まとめ
本年度予定されている『レッドデータブックふくしまU』の発刊により、本県の希少野生生物の生息・生育状況が明らかとなり、今後、野生生物の保護対策を進めるうえで基礎的なデータが整うことになる。
レッドデータブックでは、生物学的知見に基づき、希少な野生生物に影響を与えている様々な要因について明らかにしており、今後、多角的に分析を行うことにより、具体的な保護の手法を決定する際の基礎資料として、保護対策に十分に活用させることが求められる。
一方、希少野生生物の分布情報が公開されることにより、商業的に価値の高い動植物がより強い採取圧にさらされる等、情報公開に伴う影響も懸念されることから、レッドデータブック策定後遅滞なく保護対策に着手することが望ましい。
また、希少野生生物の保護対策を総合的に推進するためには、既存の保護制度では不十分であり、各施策を統一的な方針のもと、効果的に配し、計画的に推進していく必要がある。
このためには、県内の野生生物を取り巻く課題に柔軟に対応し、機動性の高い保護施策を総合的に実施するための条例の制定が必要不可欠である。その際、条例の目指す目標をより確実かつ迅速に実現するため、行動計画が作成され、これに基づき各施策が実施されることが望ましい。
5 おわりに
本県における希少野生生物の保護のあり方については、以上のとおり検討を行ったところである。
生物多様性保全の動きは各方面で活発化しており、国では、自然公園法、鳥獣保護法の改正が行われ、自然公園法では、新たに特別地域において指定を受けた動物の捕獲が規制される等、生物多様性の確保を重視した内容が盛り込まれている。鳥獣保護法の改正においては、移入種問題について総合的な対策の構築をはじめ、生物多様性の確保に向けて、野生生物保護の法体系の見直しを行うことが求められるなど、野生生物保護のあり方について全般的な議論が進んでいるところである。
本研究会においても、このような国の動向を踏まえ、野生生物全体の保護を目的としたより包括的な議論も展開された。
「環境最優先の時代」を迎え、環境に対する県民の関心は、かつてない高まりが感じられる。このような機運のもと、本県における希少野生生物の保護については、国の施策と相まって県がより地域に即した独自の施策を展開し、県民が主体的に参加していくことにより促進するものと考えられる。
本研究会の成果が「自然と人との共生」を進める福島県の施策に反映され、生物多様性に満ちた自然豊かな県土が創造されることを期待し、最終報告としたい。
最後に、本研究会の検討経過において御協力をいただいた関係者の皆様に心より感謝を申し上げる。