理科野外観察の手引びき(小・中学校編)-030/82page

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よって,大量の有機物を生産しています。この大きな二産力は,生態系の中に多くの動物を二活させることができます。動物の排出物,遺体としての有機物,また.樹木からの落葉などは,地表へ供給され,これらの有機物を分解する微小動物や微二物を活動させているのです。分解されしてできた無機物は,再び樹木に吸収されていき,物質が循環するチェーンができあがっているのです。このよう左まとまりを持っているのが二態系なのです。
そのため森林を切り開いてしまうと,気象条件左どが変化するだけでなく,物質循環などのチェーンを断ち切ることになり,二態系は大きく変化してしまいます。
最近の森林地帯の観光開発は,自然の破壊につながる大きな問題を含んでいます。県外では,コメツガやシラベの森林を切り開いてつくられた富士スバルラインで,樹木の枯死が続発し,また,日光付近の自動車道でも同じような現象が起一っています。県内の場合も例外ではなく,図一32や図一33のようにスカイラインの道路沿いにアオモリトドマツなどの立枯れが目立一ってきているのです。
一度破壊された森林はすぐには復元できません。見かけ上,木を移植し,草を植えても,高木,低木,草本類,コケ類,さらに土中微二物などが,安定した物質循環を回復するためには,百年単位の年月が必要なのです。特に亜高山帯ではいったん破壊された森林の回復は,低山地よりはるかに多い年月を必要とするのです。
自然保護に対する関心が高まりつつあり,また,学校教育の中でも取り上げられるようになってきました。自然を保護するということは,観光のための景観保全ではありません。人間を含めた生態系全体の中で考えていかなければならない問題なのです。スカイラインの立枯れ現象は,このよう左意味で,重要な素材といえましょう。
図-33 道路沿いに多い立枯れ(磐梯吾妻スカイライン)
図-33 道路沿いに多い立枯れ(磐梯吾妻スカイライン)

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