理科野外観察の手引びき(小・中学校編)-032/82page

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落です。
もともとダケカンノくはアオモリトドマツ群落を構成する陽樹なのですがアオモリトドマツが切り取られると、日光の照射量が増すため,その勢力をのばして,大きな群落になったものと思われます。この場所は,吾妻山の浄土平から西の方向に
見られます。ここには,もとイオウの鉱山があって,燃料としてアオモリトドマツを大量に伐採したため,このような群落の変化と左ってあらわれてきたのです。亜高山帯でこのように大きな規模でアオモリトドマツの群落が伐採されることは珍しく,5月中旬には,はっきりとした群落のちがいがわかります。
本県は,広大な面積の森林を持っていますが,交通の便の良い所は,ほとんど人間の手が入り,原生林は非常に少なく左ってきました。吾妻山とか会津の山間部に入らないかぎり原二林はほとんど見られず,立派な森林があっても,人間の手が入'つた森林が大部分なのです。
昔はうっそうと茂っていたと思われるブナの森林も最近では少なく左ってきました。伐採によって,ほとんどがミズナラなどの林に変化しているのです。ミズナラのような芽ばえ力の強い陽樹は,切り閉かれたところへどんどん進出して,次の森林(二次林)をつくっていくのです。福島市の高湯温泉付近は,標高から考えると,ブナ林帯に入りますが,ここには現在ミスナラの二次林が発達し,ブナが伐採され,群落が大きく変化したことがわかります。
図一35図はブナの林が切り開かれたものですが,もし,この土地がこのまま放置されれば,やがて,ミズナラ・コナラ・クリ左どの植物が入りこんでいくでし上う。人工的に行なわれる植林もこのような自然の法則を無視することはできません。もちろん,植林は生.態学が発達する以前から行なわれ,立派にその成果をあげています。しかしその歴史の中には,法則性を見つけるまでに行なわれた,数多い試行錯誤のくりかえしがあるのです。
図-35 切りたおされたブナ林(猪苗代町横向)
図-35 切りたおされたブナ林(猪苗代町横向)

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