高等学校「理科1」のてびき-053/133page

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4 実験例と結果

(1) 実験の結果と測定条件を記入させる。測定条件のうち、大気圧についてはあらかじめ測定して、結果を生徒に提示する。また、測定条件を記入させるのは、気体1モルの体積は標準状態で22.4lになることを理解させるためである。

表1 水温14℃ 気温17℃ 大気圧765mmHg

気体の種類 酸素 窒素 二酸化炭素
初めのボンベの質量 140.99g 138.93 143.15
気体放出後のボンベの質量 139.66g 137.79 141.33
気体1lの質量 1.33g 1.14 1.82

(2) 実験結果をモル数に換算させ、同体積中に同モル数・同分子数が含まれていることに気付かせる。また、酸素にに対する質量比を算出させることにより、未知の気体の分子量を求める方法を考えさせる。

表2

気体の種類 酸素 窒素 二酸化炭素
気体1lのモル数 0.042 0.041 0.041
酸素に対する気体の質量比 1 0.86 1.37

5 考察

(1) 同温、同圧、同体積のそれぞれの気体の質量は異なるが、これをモル数に換算すると実験誤差の範囲内で等しくなることからアボガドロの法則を理解させる。

(2) 酸素に対するそれぞれの気体の分子量の比と表2の酸素に対する質量の比を用いて次のような方法で未知気体の分子量を求めることができることを理解させる。

Mx : 未知気体の分子量  Wx : 未知気体1lの質量 Mx=Mo2×Wx/Wo2

Mo2 : 酸素の分子量  Wo2 : 酸素1lの質量

(3) 測定条件における気体1モルの体積を求めさせ、気体1モルの体積がおよそどの位になるかを把握させる。また、気体の体積は、温度と圧力によって変わることを理解させた上で、換算係数を与えて標準状態における気体1モルの体積を算出させてもよい。測定条件における気体の体積、大気圧、絶対温度、水蒸気圧をV、P、T、PH2Oとし、標準状態での気体の体積、大気圧、絶対温度をVoPo、Toとすると、次のようにしてVからVoを算出することができる。

Vo=P-PH2O/Po×To/T×V  この式のP-PH2O/Po×To/T を換算係数fとして生徒に与え、Vo=f・Vの関係を用いて、標準状態での体積を算出させることができる。

6 指導上の留意事項

(1) アボガドロの法則はドルトンの原子説と気体反応の法則から、理解させる万法が一般的であるが、推論ではなく、検証的な実験を通してこの法則の理解を深めるという観点からこの実験をとりあげてみた。したがって、この実験は原子量、分子量、基本的なモル概念を履習させた後に行わせるべきである。

(2) この実験では未知気体の分子量の求め方にもふれているが、生徒の実態によっては、ねらいの(1)のみを重点的に扱い、(2)ははぶいてもよい。

(3) 天秤の数が少ない場合や、時間に制限がある場合は、一種類の気体のみについて測定させ、他の生徒の実験結果を用いてまとめさせてもよい。


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