高等学校「理科1」のてびき-057/133page
(2)の場合と同様として、0.5M塩酸、0.5M硝酸をそれぞれ0.5M水酸化ナトリウム溶液と反応きせて、そのときの体積の関係を調べさせる。この場合、等量で完全に中和されるよう、あらかじめ濃度を調製しておくことが大切である。
4 実験結果と考察
(1) フェノールフタレンの呈色
フェノールフタレンは酸性で無色、アルカリ性で赤になることを確認させ、無色から赤に変る瞬間に中和が完了することを理解させる。
(2) パーセント濃度の溶液間の反応量
5%塩酸、5%硝酸のそれぞれ5mlと反応する5%水酸化ナトリウム溶液の体積を比較させ、パーセント濃度が等しくても、反応するときの体積は同じにならないこと。また、その体積は物質によって異なることを理解させる。
(3) モル濃度の溶液間の反応量
1) 0.5M塩酸、0.5M硝酸のそれぞれと反応する0.5M水酸化ナトリウム溶液の体積を比較させ、パーセント濃度と異なり反応するときの体積が等しいことに気付かせる。
2) 反応溶液中の反応物質間のモル数を計算させ、このモル数の間には簡単な整数比が成り立つことを理解させる。計算式は次のようになる。
0.5M塩酸5ml中に含まれる塩化水素のモル数 = 0.5×5/1000=2.5×10-3モル
5 指導上の留意事項
(1) 5%塩酸と5%水酸化ナトリウム溶液の反応では、式量の差が小さい(HCl=36.5、NaOH=40)ので濃度の調製を正確にしておかないと、反応する体積の差が明確にでないので留意する。塩酸と硝酸の片方だけを実験させる場合は、体積の差の大きい硝酸の方がよい。
(2) この実験では、1価の酸と1価の塩基の反応だけをとりあげたが、生徒の実態に応じて、2価の酸と1価の塩基の反応等をとりあげてもよい。
(3) この実験の発展として、食酢のモル濃度を決めさせてもよい。この場合0.5M水酸化ナトリウム溶液と反応させる食酢の量は5mlが適当である。
6 代替実験
パーセント濃度の溶液間の反応と、モル濃度の溶液間の反応の違いを簡単に理解させる方法として、次のような実験が考えられる。ただし、この場合のパーセント濃度の溶液は10%とした方が効果がある。2本の試験管を用意し、片方の試験管には10%塩酸2mlと10%水酸化ナトリウム溶液5mlを入れ、他方の試験管には0.5M塩酸5mlと0.5M水酸化ナトリウム溶液5mlを入れて反応させる。この試験管の各々にマグネシウムリボンを入れると、パーセント濃度溶液を反応させた方は塩酸が残っているので、マグネシウムの表面から水素が発生する。ただし、この実験を行う場合、それぞれの溶液の濃度を正確に調製しておくことが大切である。