理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-076/139page

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5 環境の汚染を調べる

 ―マツの葉の気孔での調査―

1 ねらい

 身近にある生物を用いて,環境の汚染状態を調べ,その実態をつかむ。ここではふつうにみられるマツの葉を対象にえらび,生活地域での大気の汚染の程度と広がりを調査する。

2 準備

 マツの葉,安全カミソリの刃,ピンセット,スライドガラス,スンプ液,スンプ板,細筆,光源装置,顕微鏡,双眼実体顕微鏡

3 方法

 マツの葉の採集地点をきめる。調査,採集地は交通量の程度に応じて,あらかじめえらんでおく。排気ガスによる汚染の影響を受けている場所,交通量のやや少ない場所,寺社の境内,学校敷地といった段階をもうけてきめておくとよい。

(1)縦断切片による方法

 1)調査地点から採集してきたマツの葉をカミソリの刃ではがす。スライドガラス上にのせ,光を側方からあて60〜150倍ぐらいの倍率で検鏡する。
 2)気孔は,葉の表面にきれいに並んでいて,大きい。焦点を変えて,各気孔の中を調べる。排気ガスなどで気孔がつまっていると,深い気孔の中が黒く見える。つまっていない気孔は,白く光って見える。
 3)調査する気孔をきまった数(30〜50個)だけえらび,つまりの状態(汚染の程度)を数える。気孔が完全につまっているもの,少しつまっているもの,つまっていないものをそれぞれ++,+,−などとして記録する。
 4)調査結果をまとめ,調査地での汚染率(つまっている気孔の割合)を出し比較してみる。
 ※ 普通の顕微鏡で観察する時は,縦断切片を用いるとよい。双眼実体顕微鏡が用意できれば,切片を作らなくても,マツの葉をそのまま用いて,十分に検鏡できる。側方からの光源の位置に注意して,立体的な気孔の配置とつまり具合が観察できる。

(2)スンプ液を用いる方法

 1)市販のスンプ板(セルロイド薄板)に筆でスンプ液を塗る。スンプ板にはA・B・Cの3種があるが,B板がいちばんやりやすい。スンプ液がかわかないうちに,採集してきたマツの葉を,スンプ板の上にのせ,両端を指先でおさえておく。一度おさえたら動かさず(約30秒)かわくのを待つ。
 2)かわいたら指先でつまんで,スンプ板からマツの葉をはがしておく。スンプ台紙は前もって穴にそってスンプ液をぬりかわかしておく。スンプした薄板を,スンプした面を下にして,穴の上におき,台紙と薄板のすきまに,筆でスンプ液をしみこませる。しばらくすると液がかわいて,薄板は台紙にはりつく。
 3)でき上ったスンププレパラートを検鏡して,マツの葉の気孔の汚染の程度を数え記録する。


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