行政的機構因子(学校組織・学校規模) 4、知的風土因子(地域社会の文化的水準や父兄の知的・教育的水準や関心)の4つである。これらは学力を規定する間接的・周辺的因子であり、これら4因子の相乗作用が実際の学校における教育的環境を規定し、児童生徒の学力も教師の指導力もその影響下にあるとする。
※ 清水利信 元横浜国立大学教授 「学力構造の心理学」
p241 金子書房 1978
冒頭に挙げた「大学の数が少ない」「学習塾が不十分」「のんびりした風土」…といった事項は、いずれも学力に対する間接的・周辺的因子である。
また、前述の4因子に関して言えば、「行政的機構因子(学校組織・学校規模)」以外には、教育の当事者として改革を進めていく上でなじむものはない。
ここで考えなければいけないことは、図の中の中央部、すなわち狭義の学力構造の中核(児童生徒の知能・人格など)に関わる「指導法の因子」である。これはまさしく、教師の人格・学識、教育体制などからなるものであり、オーソドックスと言われてもこの部分以外に学力を育てる教師の本来的な役割はないのである。この部分こそ、児童生徒の人格の発達と学力の向上に最も強く関わる部分であり、問題解決の基本である。したがって、周辺的因子に着目して批評することよりも、指導の在り方を求めたい。
平成6年度、教育センターで基本研修を受講した教員の数は、1946名にのぼる。この基本研修において、校種を越えて本県の教育課題の共通理解を図るために、15〜20分の時間をさいて「本県の学力の実態とその対応」と題して講義をおこなった。感想は、「(低すぎることに)驚いた」「何とかしなければならない」といったものが圧倒的に多かった。もちろん、疑問を呈するものもあったが、「新しい学力観」に立って「進路実現を可能とする学力」「自立した人間として、より良く生きていける学力」の伸張を目指す趣旨については基本的な理解が得られたものと考えられる。
学力向上は、まず、教師が問題の本質を理解することから始まる。その意味で、平成6年度の取り組みは、多くの先生方に多くのことを考えていただいたという意味で一応の成果を挙げ得たものと言えるであろう。
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