平成9年度学力到達度調査研究-025/62page
【資料3】のような問題を児童が自力で解決する力を育てるには,自分の考えや友だちの多様な考えを比較検討し,それぞれの考えのよさを認め,よりよい考えに練り上げる問題解決学習を展開する必要がある。さらに,面積の学習指導においては,公式を覚えさせて使えるようにさせるだけではなく,既に面積の求め方が分かっている図形に結びつけて解決しようとする考え方を大切にしていきたい。また,作り出した公式が,どんな公式を土台にして導き出されたのかという筋道をはっきりさせることが重要である。
ウ 指導の要点
○ 既習の面積の求め方に結びつけるような考えを大切にしよう
面積の学習は,4年生に始まり5年生で四角形や三角形,円の面積へと展開していく。面積はかさや長さ,重さなどとともに,物と物とが合併された時にその量の数値がたし算になる量(外延量)である。その指導においては,面積の持つ性質(加法性・保存性など)を理解させること,公式について理解させそのよさに気づかせることに配慮していきたい。さらに既習の求め方に結びつけさせて,新しい公式を生み出す過程などを通して数学的な考え方の育成を図ることも重要である。
小問例のような設問については,今まで習った図形に置き換えて面積を求めようとする態度が身に付いていれば,児童自らの力で解決できる手がかりとなる。
○ 多様な考え方を引き出し,それぞれのよさを感得させよう
「観測(池の面積)」の設問においては,【資料4】に見られるように,児童は実に多様な考え方で解決を図る。このような力を育成するためには,問題解決学習の過程で,児童に自力解決の場と時間を十分に確保する必要がある。比較検討の段階においては,それぞれの考え方などの内容を調べさせたり,意味を明らかにさせたりすることで,次第に新たな考え方で解決しようとする態度が育っていく。そのためにも,それぞれの考え方のよさを認め,励ますようにしたい。
教師は,児童の多様な考えを予想し,それぞれの考えの妥当性や関連性を把握するなど,事前の教材研究を十分行うことが必要がある。
【資料4】
「台形」の考え
(解答率88.9%)
「長方形」の考え
(解答率6.7%)
「長方形+三角形」の考え
(解答率4,4%)
《参考文献》
古藤怜著 「多様な考えの生かし方まとめ方」
東洋館出版社 (1992) 文部省 「新しい学力観に立つ算数科授業の工夫」 東洋館出版社 (1995) 片桐重男著 「数学的な考え方を育てるねらいと評価」 明治図書 (1995) 「数学的な考え方を育てる量と測定の指導」 明治図書 (1995) 算数授業研究会 「これだけはおさえたい基礎・基本とその授業第5学年の授業」 東洋館出版社 (1997)