実践のための学校教育相談ハンドブック-064/083page
7 摂食障害 〜食を通した訴えとは〜 (1) 摂食障害とは
いわゆる 拒食症 (神経性無食欲症・思春期やせ症)と 過食症 (神経性大食症)を併せて摂食障害と呼びます。摂食障害は,単なるダイエットのし過ぎや食べ過ぎではありません。思春期から30歳前後の女性にみられ,近年増加しています。
これまで,拒食症と過食症は別のものと考えられていましたが,両者は密接に関連していて,一方から他方に移りやすいことがわかってきています。@病気でもないのに目立ってやせてくる,A3ケ月以上無月経が続く,B体重へのこだわりが見られる,C体重の大きな変動がみられる(4〜5kg以上),D下剤ややせ薬を乱用することがある,E無気力・気分の落ち込みが見られる(過食症の場合),などの状態が現れます。
摂食障害になると,拒食の極限状態→過食の極限状態→嘔吐の悪循環を繰り返す場合があります。心と体のバランスが崩れ,命が危険な状態になるのにもかかわらず,やせているという自覚がなく,もっとやせたいと願うようになります。食を通して,怒りや屈辱感,それに絶望感といった激しい感情を忘れようとします。摂食障害は,幼いころの家族との関係も反映していて,まさに,愛情に飢えた心を満たそうとしているのです。進行すれば死につながる危険性もあります。
(2) 発見とリファーを念頭においた対応
摂食障害の根底にある心理的な問題は複雑なものがあります。学校では,担任はもとより,養護教諭のリーダーシップのもと,複数の眼で対応していくことが重要です。生徒の精神的SOSのサインを見落とさないためにも,毎朝の健康観察時の顔色,昼食時の様子,体育時の見学等に気を配って観察していくことが大切です。
摂食障害であることがわかった場合には,直ちにカウンセリングを行っていくとともに,親や家族を含めた生活環境全体の調整を図りながら,心も体もみてくれる専門医や専門の相談機関へのリファー(委託,紹介)を念頭に置くことが必要です。